量子に学ぶ経済学の考え方 ②
量子論的な「米大統領選挙」
吉成 正夫（東京都練馬区）
前回に続いて米大統領選挙です。世界の趨勢を決めるこの選挙が，異常の連続で着地しました。歴史の転換点は常にそうですが「実に量子的」です。 人間は「多様で自己主張の強い」存在です。こうした人たちを国民として統治するのに，中国は独裁政治で，米国は民主主義で統治しています。中国は領土支配の結果として多様な民族を抱え込み，一方，米国は積極的に移民を受け入れ経済を発展させました。利己的で意見がまちまちな国民の統治形式としてどちらが優れているのか。 2020年の米国大統領選挙は，ごく僅差で民主党バイデンの勝利となりましたものの，米国の混乱ぶりに中国は「自分たちの政治体制が優れている」と凱歌をあげました。とは言え，中国も米国もいろいろな問題を抱えていますから最終的に勝負がついたわけではありません。
量子理論が人間社会に深い関わりをもつキーワードとして「関係性」「変化」「多様性」などがあり，これらは「量子の特性」から導かれるものです。 まず「多様性」です。世界の人口76億人は皆ばらばらです。これだけ見事に違うのは量子の特性によるものと考えます。人間の目・鼻・口などの道具立ては同じなのに人相はまったく異なり，顔認証システムで識別されます。指紋も虹彩も違います。なによりも個性が違います。その人の生まれた地域，時代，家族，遺伝子，宗教などによって個性の違いが出てきます。量子は不思議な存在で，超ミニの量子があたかも意識を持っているように振る舞います。何故そうなのかは「神の御業」としか言いようがありません。アインシュタインは神の存在を信じていたと言い伝えられていますが，量子の不思議な振る舞いを観察して最後は神を信じるしかないという結論に至ったのではないでしょうか。
量子は，位置がはっきりしない確率的存在ですが，いったん環境の変化が起きると，それに適応し変化します。量子は自らの生き残りをかけて最適状態を選択します。「ウイルス」「遺伝子」「細胞」「人間」と順に組織化し階層を上げていっても量子的な性格はそのままです。むしろ量子的性格があるから組織化されるのではないかと思われます。「利己的」というのは，「自分の生き残りをかける」別表現で、生物、人間の根源的な本能と言えましょう。動物行動学者リチャード・ドーキンスは生物進化や自然選択を「利己的な遺伝子」（1976）の視点から説明しました。
こうしたランダムに動く量子たちは，周囲の環境変化に適応しつつ，いつしか「混乱」と「秩序」のはざまで活発な動きを繰り広げます。こうした状態は「カオスの縁」と名づけられ，「複雑系の科学」では生命現象のような柔軟な組織を理解するための重要な概念とされます（「複雑系入門」井庭崇ほか，NTT出版、1998）。
気象学者ローレンツが気象を支配する方程式を導くなかで「カオス」という予測不可能な振る舞いをすることを発見しました。「バタフライ効果」としてよく引用されます。北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起きるような，ごくわずかな差異が思いもよらない結果になる意味です。人口76億人の国際社会も同じような現象を起こしますし歴史上の王朝の変遷にも観察されます。「支配」と「被支配」の落差が大きくなった時，何かの事件をきっかけに革命に発展することもあります。
2021年1月20日に就任する第46代バイデン大統領は最後の最後まで予断を許さない厳しい状況でした。もしコロナが発生していなければトランプはらくらく再選されたでしょう。トランプは公約を忠実に実行しましたし，コロナ前までは景気は良好で失業率も最低，株価も高値圏にありました。IT化と中国の安価な労働力によって製造業は空洞化し，かつては豊かな中間層であった白人労働者たちはラストベルト（中西部の錆び付いた地帯）の中で放置され民主党政権やマスコミも振り向いてもくれませんでした。オバマが大統領に就任して以来，様々の白人至上主義者のグループが全国に誕生しました。かれらの鬱積した心情をくみ上げたのがトランプでした。彼らにとってトランプは救世主だったでしょう。彼の独特のアッピール力とツイッターの発信力で7400万票を獲得しました。もし郵便投票がなかったら。トランプの性格がこれほどあくどくなかったら。「トランプでなければ誰でもよい」という有権者は少なかったでしょう。1月6日の米国議会襲撃事件は，トランプのオウンゴールとなり，大統領・下院・上院の三つのブルーウェーブで決着しました。僅かの差が今後4年間の国際政治の方向を切り替えました。これから第二幕が開きます。コロナへの対応，トランプの動き，中国への対応など，想定外の「変化」がまだまだ続いていきます。
（注）量子と人間社会の関係は，私の個人的な仮説によるものです。
量子論的な「米大統領選挙」
吉成 正夫（東京都練馬区）
前回に続いて米大統領選挙です。世界の趨勢を決めるこの選挙が，異常の連続で着地しました。歴史の転換点は常にそうですが「実に量子的」です。 人間は「多様で自己主張の強い」存在です。こうした人たちを国民として統治するのに，中国は独裁政治で，米国は民主主義で統治しています。中国は領土支配の結果として多様な民族を抱え込み，一方，米国は積極的に移民を受け入れ経済を発展させました。利己的で意見がまちまちな国民の統治形式としてどちらが優れているのか。 2020年の米国大統領選挙は，ごく僅差で民主党バイデンの勝利となりましたものの，米国の混乱ぶりに中国は「自分たちの政治体制が優れている」と凱歌をあげました。とは言え，中国も米国もいろいろな問題を抱えていますから最終的に勝負がついたわけではありません。
量子理論が人間社会に深い関わりをもつキーワードとして「関係性」「変化」「多様性」などがあり，これらは「量子の特性」から導かれるものです。 まず「多様性」です。世界の人口76億人は皆ばらばらです。これだけ見事に違うのは量子の特性によるものと考えます。人間の目・鼻・口などの道具立ては同じなのに人相はまったく異なり，顔認証システムで識別されます。指紋も虹彩も違います。なによりも個性が違います。その人の生まれた地域，時代，家族，遺伝子，宗教などによって個性の違いが出てきます。量子は不思議な存在で，超ミニの量子があたかも意識を持っているように振る舞います。何故そうなのかは「神の御業」としか言いようがありません。アインシュタインは神の存在を信じていたと言い伝えられていますが，量子の不思議な振る舞いを観察して最後は神を信じるしかないという結論に至ったのではないでしょうか。
量子は，位置がはっきりしない確率的存在ですが，いったん環境の変化が起きると，それに適応し変化します。量子は自らの生き残りをかけて最適状態を選択します。「ウイルス」「遺伝子」「細胞」「人間」と順に組織化し階層を上げていっても量子的な性格はそのままです。むしろ量子的性格があるから組織化されるのではないかと思われます。「利己的」というのは，「自分の生き残りをかける」別表現で、生物、人間の根源的な本能と言えましょう。動物行動学者リチャード・ドーキンスは生物進化や自然選択を「利己的な遺伝子」（1976）の視点から説明しました。
こうしたランダムに動く量子たちは，周囲の環境変化に適応しつつ，いつしか「混乱」と「秩序」のはざまで活発な動きを繰り広げます。こうした状態は「カオスの縁」と名づけられ，「複雑系の科学」では生命現象のような柔軟な組織を理解するための重要な概念とされます（「複雑系入門」井庭崇ほか，NTT出版、1998）。
気象学者ローレンツが気象を支配する方程式を導くなかで「カオス」という予測不可能な振る舞いをすることを発見しました。「バタフライ効果」としてよく引用されます。北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起きるような，ごくわずかな差異が思いもよらない結果になる意味です。人口76億人の国際社会も同じような現象を起こしますし歴史上の王朝の変遷にも観察されます。「支配」と「被支配」の落差が大きくなった時，何かの事件をきっかけに革命に発展することもあります。
2021年1月20日に就任する第46代バイデン大統領は最後の最後まで予断を許さない厳しい状況でした。もしコロナが発生していなければトランプはらくらく再選されたでしょう。トランプは公約を忠実に実行しましたし，コロナ前までは景気は良好で失業率も最低，株価も高値圏にありました。IT化と中国の安価な労働力によって製造業は空洞化し，かつては豊かな中間層であった白人労働者たちはラストベルト（中西部の錆び付いた地帯）の中で放置され民主党政権やマスコミも振り向いてもくれませんでした。オバマが大統領に就任して以来，様々の白人至上主義者のグループが全国に誕生しました。かれらの鬱積した心情をくみ上げたのがトランプでした。彼らにとってトランプは救世主だったでしょう。彼の独特のアッピール力とツイッターの発信力で7400万票を獲得しました。もし郵便投票がなかったら。トランプの性格がこれほどあくどくなかったら。「トランプでなければ誰でもよい」という有権者は少なかったでしょう。1月6日の米国議会襲撃事件は，トランプのオウンゴールとなり，大統領・下院・上院の三つのブルーウェーブで決着しました。僅かの差が今後4年間の国際政治の方向を切り替えました。これから第二幕が開きます。コロナへの対応，トランプの動き，中国への対応など，想定外の「変化」がまだまだ続いていきます。
（注）量子と人間社会の関係は，私の個人的な仮説によるものです。
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