有限会社 三九出版 - 《自由広場》 With Corona…


















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             With Corona…

          三谷 徹男(群馬県伊勢崎市)

♠ 深刻な出来事
  1月31日。東京駅で地下鉄に乗り換え,座席に腰を下ろした時,相向かい側の席にいる外国人カップルがマスクをしているので驚いた。タクシーの運転手さん達が屋形船で新年会を開いていたのが1月18日だったとNHKのニュース。にわかに新型コロナウイルスの感染を警戒し始めたころだ。
あれから,9カ月も過ぎた。
  「これは厄介なことが起きた」これが偽らざる気持ちだった。やがて東京都知事が「三密の排除」を声高に言い始め,4,5,6月が営業自粛となり,同時に経営は急速に悪化した。もう少し細かく述べれば,例年2月に行われていた大規模イベントは,いち早く中止と決めた。(それでも,一縷の望みを捨てきれないでいたのだが),事態は3月末のセミナーも中止にせざるを得ないほどに悪化した。 「これはとんでもないことが起きた」冷静さを装いながらも,従来から気に咎めていた我社の経営構造の脆弱さに「こんな時になあ」と,腰が抜けた状態でいたのだ。
♦ こんな事が起こるなんて
  私はA社の会長を務めている。五年ほど前に,ある事業を分離してB社をつくった。と言ったって二つ合わせて僅か二,三十名の小規模事業所の代表である。
 母体であるA社は,いわゆるFLOW型,B社はSTOCK型だ。両社とも,このコロナの一撃を食らったのだが,財務体質の弱いA社の損害は大きい。日頃それを心配して,何れ両社の合併をと思い描いていたのだが,急遽それを実行する羽目になった。親の名を残すために子会社を吸収する格好だが,実際は子会社のBが親会社のAを吸収する,いわゆる「逆さ合併」に近い。体裁はどうでもいい。生き残ることが先決だと決めた。
 経営に影響したのは言わずもがな「三密」である。居酒屋さん同様,我々のビジネスは,この「三密」を旨として進めて来たのだ。今年の正月も,年頭の所信で,何ら疑うことなく「今年も賑やかな三密を実現するぞ」と宣言したのだ。この,A社のビジネスは「研修・コンサルティング事業」と称するものである。「密」なくしてビジネ スは成り立たない。「興行」と同じである。 時代を読み, 組織の課題を読みながら解決策を「提案」する。 よって, 機会あるごとに商品を売り, 仕事を請け負う, 正に「FLOW」型なのだ。そのビジネスが,顧客を避け,三密を避けて自粛するとなれば,事業の流れはピタリと止まってしまう。子会社のB社は,幼稚園に講師を継続的に派遣するSTOCK型であり,そのSTOCKがかろうじて働いていたので収益が上がり助かった。この救命筏がなければA社は,僅か数カ月で店じまいに追い込まれていただろう。
❤ 逆さ合併
 春から半年が過ぎて,ようやく9月にこの合併登記が完了した。実は,これを機に,社長も交代(若返り)した。法規上の変更に随分時間が掛かるものだ。とは言え,途中で「持続化給付金」を頂くことができ,「営業外収益」として計上させていただいている。
 つい最近「Webinar」の開催にたどり着いた。これは講師と受講者をPC回線でつなぐ例のもので,少し,今日的な風景に近づけたが,とは言え,あの「密」の時代にはほど遠い。もう少し我慢すれば,またあの密がやって来るだろう。歴史を見たってそうなるに違いない。しかし,心に残る傷はそう簡単に癒えそうにもない。パラダイムが変わったと見た方がいいのかも知れない。思いっきり「ブレークスルー」する,いいチャンスだと思いつつも,まだもやもやの状態が続いているのである。
☘ 出直し
 商売の成り立ちを少し考えてみた。小売り・サービス業の場合,メーカーが作ったものを,問屋を通して仕入れ,それに販売店として再度値付けをし,陳列して,販売・サービスをする。
 現代はどう変わっているのか?衣料品の雄であるユニクロの例を通じて考えてみた。
メーカーから仕入れをするのだが,メーカー任せにしないで,小売店であるユニクロが「商品企画」をすると言う。陳列,販売は他店と同じに見えるが,大いに驚いたのがレジだ。なにしろ籠の中に入れた商品を自動で読み込むシステムなのだ。当然において無人だ。これを「DX」と言うのだろう。多分,売上計算だけではなく,商品と購入者に関する情報も同時に読み取られているに違ない。それを商品企画にフィードバックする。なるほど,新しいビジネスだ。我々にはこの情報だけで十分だ。
 もう一度,やり直さねばならない。
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