〔隠居のたわごと〕 一周遅れの政治論
小楯 蒼平(神奈川県相模原市)
善公 「飽ききぬと目にはさやかに見えねども 嬶の屁にぞおどかれぬる」とね。ご隠居,ご機嫌いかがです?
隠居 「秋きぬと……」――古今和歌集からのもじりできましたね。
善公 いやね,嬶の屁はどうでもいいんですが,鳩山政府(民主党)に愛想を尽かしかけていたら,案の定看板をかけ変えましたね
隠居 これはこれは,めずらしくご政道批判ですか。まあ,お化粧直しはうまくいったようですが,さてさてその化粧,暑さで剥がれなけりゃいいですがね。でも,ここは一応期待して,われわれも我慢するところは我慢して……。
善公 また我慢ですかい。それじゃ,小泉時代の「我慢」の再現じゃないですか。
隠居 小泉首相がもたらした「我慢」の結果は,眼目の郵政民営化ひとつをとっても瞭らかです。〈かんぽの宿〉売却の不透明,地方局の統・廃合による利用者の不便を生み出しただけ。こんどの菅首相の政治目標――「最小不幸社会の実現」は国民の大いなる願い。だから,それに賭けてみようじゃないかということです。
善公 それにしても,すぐに出来るものもあるんじゃないですかね。
隠居 たしかにね。そこのところは細かく検討し,やれるものはすぐにでも手をつけてもらわなければいけません。じつはわたしもいくつか文句を言いたいことはあります。たとえば「子ども手当」と沖親の「基地移転問題」。
善公 「子ども手当」は結構なことじゃありませんか。
隠居 子育て家庭の支援という意図はいいが,当初から給付の対象設定が問題とか,養育環境の整備こそ急務とか,問題噴出。そのうえ財源がなく,満額支給は困難。いまや腰砕けですな。沖縄の「基地移転問題」は,〈県外移転音頭〉を気持ちよく踊ったのは前首相だけ。沖縄のひとびとは〈辺野古音頭〉で我慢。大事なのは日米関係で,沖縄のひとびとではないことが瞭らかになったわけです。
善公 日米の核持ち込み密約がありましたが,〈基地〉についても何か密約が……,というと言い過ぎですが,見通しが甘かったんじゃないですかね。
隠居 そう疑われてもしかたがないかもしれません。とにかく「子ども手当」も「基地移転問題」も,もっと根本的な検討が必要だったんです。とくに「基地移転問題」は相手があるし,歴史的な経緯もあるので,一方的に日本の主張を押しつけるわけにはいかない――つまり,日米安全保障条約そのものを検討し直す必要があったんです。それしか「基地移転問題」の根本的解決はないのです。そもそも何に対しての「安全保障」? 安全を脅かすのは北朝鮮? 中国? ロシア?
善公 あっしの天敵の熊公。そんなやつはどこにでもいるんじゃありませんか。
隠居 仮にいるとして,日本が攻撃を受けたときにアメリカは守ってくれますか?「拉致問題」でアメリカは本気で日本の後ろ盾になってくれましたか?
善公 みんな,わが身がかわいいですからね。先日もおいらの浮気がバレて嬶にどやされていたときに,マプダチの五助め,助けちゃくれなかった……。
隠居 それは身から出た錆というものです。ところで,余談になりますが,日米安全保障条約を問題にすると,かならず自国の〈防衛力〉強化をいう人間が出てきます。でもそのひとたちは歴史に学ぶということを忘れています。例えば,戦争になった時,資源をもたない国がどれだけ戦えますか? 第二次世界大戦で日本はその事実をいやというほど思い知らされたはずです。見掛け倒しの〈防衛力)に勝る武器――日本には憲法第九条というすばらしい武器があるではありませんか。日本は憲法で「武力の行使は……永久にこれを放棄する」と謳っています。喧嘩はしないという人間に喧嘩を売る人間はいません。いや,これ幸いと侵略される,というおひとには,わたしの師匠のこの言葉を聞いてもらいたい――「憲法九条を守ることでもしも滅びることがあるなら,潔く滅んでしまおう。ひとつの国がその存在を賭けて平和のために滅びる,そんな潔いことはないではないか。後世の歴史書に,『この地球にかつて日本という国があったが,平和を守るという自国の信念に殉じて消滅した』と書かれることを誇ろうではないか」。
善公 ご隠居,そう興奮しちゃからだに悪い……。
隠居 いや,お恥ずかしい。ところで,あたしの話に新しいものは何もありません。いままで多くのひとが論じてきたものを蒸し返しただけです。せっかくの政権交代ですから,政府(民主党)と国民が日本の未来にとって何が必要なのかをきちんと確認し合う,いい関係を作りたいものです。それには相互信頼が大切です。
善公 あっしの嬶は便所は長っ尻なのに気は短ぇときていやがる。あっしは気は短ぇのに博打は年季が入っている……。これ,いい関係ですかね。
隠居 よくわからん譬えだが,いずれにしても,おまえさんとわたしの莫迦話のように,気楽にもの申せるような風通しのよい政治をしてほしいもんだね。
小楯 蒼平(神奈川県相模原市)
善公 「飽ききぬと目にはさやかに見えねども 嬶の屁にぞおどかれぬる」とね。ご隠居,ご機嫌いかがです?
隠居 「秋きぬと……」――古今和歌集からのもじりできましたね。
善公 いやね,嬶の屁はどうでもいいんですが,鳩山政府(民主党)に愛想を尽かしかけていたら,案の定看板をかけ変えましたね
隠居 これはこれは,めずらしくご政道批判ですか。まあ,お化粧直しはうまくいったようですが,さてさてその化粧,暑さで剥がれなけりゃいいですがね。でも,ここは一応期待して,われわれも我慢するところは我慢して……。
善公 また我慢ですかい。それじゃ,小泉時代の「我慢」の再現じゃないですか。
隠居 小泉首相がもたらした「我慢」の結果は,眼目の郵政民営化ひとつをとっても瞭らかです。〈かんぽの宿〉売却の不透明,地方局の統・廃合による利用者の不便を生み出しただけ。こんどの菅首相の政治目標――「最小不幸社会の実現」は国民の大いなる願い。だから,それに賭けてみようじゃないかということです。
善公 それにしても,すぐに出来るものもあるんじゃないですかね。
隠居 たしかにね。そこのところは細かく検討し,やれるものはすぐにでも手をつけてもらわなければいけません。じつはわたしもいくつか文句を言いたいことはあります。たとえば「子ども手当」と沖親の「基地移転問題」。
善公 「子ども手当」は結構なことじゃありませんか。
隠居 子育て家庭の支援という意図はいいが,当初から給付の対象設定が問題とか,養育環境の整備こそ急務とか,問題噴出。そのうえ財源がなく,満額支給は困難。いまや腰砕けですな。沖縄の「基地移転問題」は,〈県外移転音頭〉を気持ちよく踊ったのは前首相だけ。沖縄のひとびとは〈辺野古音頭〉で我慢。大事なのは日米関係で,沖縄のひとびとではないことが瞭らかになったわけです。
善公 日米の核持ち込み密約がありましたが,〈基地〉についても何か密約が……,というと言い過ぎですが,見通しが甘かったんじゃないですかね。
隠居 そう疑われてもしかたがないかもしれません。とにかく「子ども手当」も「基地移転問題」も,もっと根本的な検討が必要だったんです。とくに「基地移転問題」は相手があるし,歴史的な経緯もあるので,一方的に日本の主張を押しつけるわけにはいかない――つまり,日米安全保障条約そのものを検討し直す必要があったんです。それしか「基地移転問題」の根本的解決はないのです。そもそも何に対しての「安全保障」? 安全を脅かすのは北朝鮮? 中国? ロシア?
善公 あっしの天敵の熊公。そんなやつはどこにでもいるんじゃありませんか。
隠居 仮にいるとして,日本が攻撃を受けたときにアメリカは守ってくれますか?「拉致問題」でアメリカは本気で日本の後ろ盾になってくれましたか?
善公 みんな,わが身がかわいいですからね。先日もおいらの浮気がバレて嬶にどやされていたときに,マプダチの五助め,助けちゃくれなかった……。
隠居 それは身から出た錆というものです。ところで,余談になりますが,日米安全保障条約を問題にすると,かならず自国の〈防衛力〉強化をいう人間が出てきます。でもそのひとたちは歴史に学ぶということを忘れています。例えば,戦争になった時,資源をもたない国がどれだけ戦えますか? 第二次世界大戦で日本はその事実をいやというほど思い知らされたはずです。見掛け倒しの〈防衛力)に勝る武器――日本には憲法第九条というすばらしい武器があるではありませんか。日本は憲法で「武力の行使は……永久にこれを放棄する」と謳っています。喧嘩はしないという人間に喧嘩を売る人間はいません。いや,これ幸いと侵略される,というおひとには,わたしの師匠のこの言葉を聞いてもらいたい――「憲法九条を守ることでもしも滅びることがあるなら,潔く滅んでしまおう。ひとつの国がその存在を賭けて平和のために滅びる,そんな潔いことはないではないか。後世の歴史書に,『この地球にかつて日本という国があったが,平和を守るという自国の信念に殉じて消滅した』と書かれることを誇ろうではないか」。
善公 ご隠居,そう興奮しちゃからだに悪い……。
隠居 いや,お恥ずかしい。ところで,あたしの話に新しいものは何もありません。いままで多くのひとが論じてきたものを蒸し返しただけです。せっかくの政権交代ですから,政府(民主党)と国民が日本の未来にとって何が必要なのかをきちんと確認し合う,いい関係を作りたいものです。それには相互信頼が大切です。
善公 あっしの嬶は便所は長っ尻なのに気は短ぇときていやがる。あっしは気は短ぇのに博打は年季が入っている……。これ,いい関係ですかね。
隠居 よくわからん譬えだが,いずれにしても,おまえさんとわたしの莫迦話のように,気楽にもの申せるような風通しのよい政治をしてほしいもんだね。
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