☆ふるさと紹介
日本の国石ヒスイと糸魚川
寺﨑 義博（新潟県糸魚川市）
2016（平成28）年9月24日，市民の耳にビッグニュースが飛び込みました。「ヒスイが日本の国石になりました！」。その日，金沢大学で開催された日本鉱物科学会の総会で「国石」を決める初めての投票が行われ，最終候補となった５つの岩石 ― ヒスイ・花崗岩・輝安鉱・自然金・水晶 ― の中からヒスイが選定されたのです。
「ヒスイ」― 漢字では「翡翠」，中国語の発音では「フェイツィ」，英語では「Jade」― は縄文時代から弥生～古墳～奈良時代にかけて道具（敲き石など）や装飾品（大珠や勾玉）として使われていました。それらの時代にはヒスイの原石は糸魚川産として認識されていたと思われます。なぜなら縄文時代から今日に至るまで我が国において装飾品となりうるような良質のヒスイは糸魚川以外では見つかっていないからです。ところが奈良時代に何故かヒスイが使われなくなってから長い間ヒスイは忘れられていました。
1938（昭和13）年，相馬御風（糸魚川在住の文人・歌人／早稲田大学校歌「都の西北」，童謡「春よ来い」作詞）の助言がきっかけとなって小滝川支流でヒスイと思しき岩石が発見され，翌1939（昭和14）年，東北大学の河野義礼博士により，それがヒスイであると鑑定され論文に発表されました。平和な時代であれば“小滝川で翡翠発見”は一躍脚光を浴びたことと思いますが，当時は日中戦争の真っ只中，世の中ヒスイどころではありませんでした。
戦後，世の中が少しずつ落ち着いてくるとヒスイの価値に気づいた者による採掘・運び出しが行われるようになり，1956（昭和31）年，貴重な資源を保護するため「小滝川ヒスイ峡」が国の天然記念物に指定され，翌1957（昭和32）年，「青海川ヒスイ峡」も国の天然記念物に指定されました（青海川ヒスイ峡の発見は1955（昭和30）年）。
今年，4月末から5月にかけての10連休，ヒスイの町糸魚川は連日地元ナンバーではない車であふれました。日本海で釣りを楽しむ人々，世界ユネスコジオパークの町糸魚川のジオサイト巡りをする人々，海岸や姫川（糸魚川には“糸魚川”という川はありません。ヒスイのふる里・小滝川は姫川の支流です）でヒスイ探しをし，収集した石を「フォッサマグナミュージアム」に持ち込んで石の鑑定をしてもらう人々，etc.。
人口42550（令和元年6月1日現在）の町糸魚川は「日本ジオパーク」を経て2009（平成21）年「世界ジオパーク」（Itoigawa Global Geopark）に認定されました。日本で最初に世界ジオパークに認定された三つの中の一つです。2015年にはユネスコの正式事業となり「ユネスコ世界ジオパーク」となりました。現在「ユネスコ世界ジオパーク」は41か国，148地域。第1位・中国39地域，第2位・スペイン13地域，第3位・イタリア10地域，第4位・日本9地域。なお，「日本ジオパーク」は現在44地域（世界ジオパーク認定の9地域を含む）となっています。
ジオパーク（Geopark）の“geo”は“geology”などのgeo-で“土地（の），地球（の），地理（の）”を表し，parkは公園。造語“Geopark”は“大地の公園”と訳されます。
世界ジオパークネットワークに参加するジオパークには次のような活動を行うことが求められています。
★ 地域の地史や地質現象がよく分かる地質遺産を多数含むだけでなく，考古学的・生態学的もしくは文化的な価値のあるサイトも含む，明瞭に境界を定められた地域である。
★ ジオツーリズムなどを通じて，地域の持続可能な社会・経済発展を育成する。
★ 博物館，自然観察路，ガイド付きツアーなどにより，地球科学や環境問題に関する教育・普及活動を行う等。
2016（平成28）年12月22日に発生した糸魚川市駅北大火から2年半になります。ヒスイが日本の国石に選ばれてからわずか３ケ月での災難でした。その後，国や県，
全国の皆様からの温かいご支援のおかげで被災地域の復興が進められ被災地にもようやく明るさや賑わいが戻ってきました。北陸新幹線開通により東京から２時間ちょっとで糸魚川です。全国の皆さん，復興なった糸魚川へ是非お出かけください。日本有数の石の種類を誇る糸魚川の海岸ウォーキングを楽しみながら，少し疲れたら能登半島に沈むビューティフルサンセットを眺めてください。そして，願わくば緑・青・うす紫・白・黒の糸魚川硬玉ヒスイと出会えますことを！
新潟県西端に位置する糸魚川はヒスイとユネスコ世界ジオパークのまちです。
日本の国石ヒスイと糸魚川
寺﨑 義博（新潟県糸魚川市）
2016（平成28）年9月24日，市民の耳にビッグニュースが飛び込みました。「ヒスイが日本の国石になりました！」。その日，金沢大学で開催された日本鉱物科学会の総会で「国石」を決める初めての投票が行われ，最終候補となった５つの岩石 ― ヒスイ・花崗岩・輝安鉱・自然金・水晶 ― の中からヒスイが選定されたのです。
「ヒスイ」― 漢字では「翡翠」，中国語の発音では「フェイツィ」，英語では「Jade」― は縄文時代から弥生～古墳～奈良時代にかけて道具（敲き石など）や装飾品（大珠や勾玉）として使われていました。それらの時代にはヒスイの原石は糸魚川産として認識されていたと思われます。なぜなら縄文時代から今日に至るまで我が国において装飾品となりうるような良質のヒスイは糸魚川以外では見つかっていないからです。ところが奈良時代に何故かヒスイが使われなくなってから長い間ヒスイは忘れられていました。
1938（昭和13）年，相馬御風（糸魚川在住の文人・歌人／早稲田大学校歌「都の西北」，童謡「春よ来い」作詞）の助言がきっかけとなって小滝川支流でヒスイと思しき岩石が発見され，翌1939（昭和14）年，東北大学の河野義礼博士により，それがヒスイであると鑑定され論文に発表されました。平和な時代であれば“小滝川で翡翠発見”は一躍脚光を浴びたことと思いますが，当時は日中戦争の真っ只中，世の中ヒスイどころではありませんでした。
戦後，世の中が少しずつ落ち着いてくるとヒスイの価値に気づいた者による採掘・運び出しが行われるようになり，1956（昭和31）年，貴重な資源を保護するため「小滝川ヒスイ峡」が国の天然記念物に指定され，翌1957（昭和32）年，「青海川ヒスイ峡」も国の天然記念物に指定されました（青海川ヒスイ峡の発見は1955（昭和30）年）。
今年，4月末から5月にかけての10連休，ヒスイの町糸魚川は連日地元ナンバーではない車であふれました。日本海で釣りを楽しむ人々，世界ユネスコジオパークの町糸魚川のジオサイト巡りをする人々，海岸や姫川（糸魚川には“糸魚川”という川はありません。ヒスイのふる里・小滝川は姫川の支流です）でヒスイ探しをし，収集した石を「フォッサマグナミュージアム」に持ち込んで石の鑑定をしてもらう人々，etc.。
人口42550（令和元年6月1日現在）の町糸魚川は「日本ジオパーク」を経て2009（平成21）年「世界ジオパーク」（Itoigawa Global Geopark）に認定されました。日本で最初に世界ジオパークに認定された三つの中の一つです。2015年にはユネスコの正式事業となり「ユネスコ世界ジオパーク」となりました。現在「ユネスコ世界ジオパーク」は41か国，148地域。第1位・中国39地域，第2位・スペイン13地域，第3位・イタリア10地域，第4位・日本9地域。なお，「日本ジオパーク」は現在44地域（世界ジオパーク認定の9地域を含む）となっています。
ジオパーク（Geopark）の“geo”は“geology”などのgeo-で“土地（の），地球（の），地理（の）”を表し，parkは公園。造語“Geopark”は“大地の公園”と訳されます。
世界ジオパークネットワークに参加するジオパークには次のような活動を行うことが求められています。
★ 地域の地史や地質現象がよく分かる地質遺産を多数含むだけでなく，考古学的・生態学的もしくは文化的な価値のあるサイトも含む，明瞭に境界を定められた地域である。
★ ジオツーリズムなどを通じて，地域の持続可能な社会・経済発展を育成する。
★ 博物館，自然観察路，ガイド付きツアーなどにより，地球科学や環境問題に関する教育・普及活動を行う等。
2016（平成28）年12月22日に発生した糸魚川市駅北大火から2年半になります。ヒスイが日本の国石に選ばれてからわずか３ケ月での災難でした。その後，国や県，
全国の皆様からの温かいご支援のおかげで被災地域の復興が進められ被災地にもようやく明るさや賑わいが戻ってきました。北陸新幹線開通により東京から２時間ちょっとで糸魚川です。全国の皆さん，復興なった糸魚川へ是非お出かけください。日本有数の石の種類を誇る糸魚川の海岸ウォーキングを楽しみながら，少し疲れたら能登半島に沈むビューティフルサンセットを眺めてください。そして，願わくば緑・青・うす紫・白・黒の糸魚川硬玉ヒスイと出会えますことを！
新潟県西端に位置する糸魚川はヒスイとユネスコ世界ジオパークのまちです。
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