○ふるさと紹 介
知られざる明日香の魅力
山口 康弘(大阪府大阪市)
「上記のテーマで書くように」と仰せつかったものの,ただ明日香に生まれ育ったというだけで,歴史知識も浅く,皆様にお伝えできるようなことなどありませんが,敢えて書き連ねてまいります。
毎年二月の第一日曜日,飛鳥坐神社で奇祭「おんだ祭り」が行われます。五穀豊穣を願う演舞は,滑稽,淫靡で,まさしく見もの。また演舞前後にも,あちらこちらで嬌声が響き渡ります。というのも,天狗,牛,翁の面を被った青年が,竹棒片手に観客たちを追い回し,そのお尻を遠慮なく叩いているではないですか。叩かれると,子宝が授かる,もしくはこの一年健康に過ごせる等のご利益があるそうですが,半端なく痛いですから要注意。しかし,スリル満点の参加気分が味わえる,とても楽しいお祭りです。ちなみに,飛鳥坐神社をお守りしている飛鳥さんは,折口信夫のおじいさんの生家でもあります。
祭りと言えば,秋の彼岸花祭も,お勧めです。山田洋次監督が日本の田舎100景に数えた奥飛鳥の棚田や,板葺の宮から天の香具山までの田園等,村中の稲穂が黄金色に輝く中,あぜ道には真っ赤な曼珠沙華。日が落ちると,村中のいたるところに灯篭が灯され,幽玄なこと,この上なし。
四季それぞれに魅力があります。
春は菜の花,桜にレンゲ草。初夏はホタルの乱舞。また,飛鳥川はカジカ蛙の産地で,笛の音のような美声を聞くことができます。木々の葉が色づく頃,田畑では野焼きの煙。牧歌的な夕景の後、きつね色した大きな満月。明日香は昔からお月見スポットとしても有名です
そうそう余談ですが,稲渕集落を少し上がったところにある飛鳥川上座宇須多岐比売命神社(日本で一番名前の長い神社としても有名)は,心霊スポットとして,村人にも恐れられています。私も子供の頃,神社の下あたりで,ボロボロの自転車を押して歩いてくる黒猫を肩に乗せた顔面蒼白の娘に出くわし,友達と泣き叫びながら逃げ去った記憶があります。お化けついでに言うのなら,祝戸にあるふんぐり山や,橘寺の仏頭山も,子供に恐れられていました。といっても,今時,幽霊を怖がる子供など, いないかも知れませんね。
眺望を楽しむのなら,甘橿の丘は外せません。大和三山を一望でき,明日香の里も
見下ろせます。また石舞台古墳の東側の丘を少し上がるだけで,二上山に沈む日を拝むこともできます。
宿泊施設に関していえば,星野グループが明日香に宿泊施設を作る計画が進んでいるようですが,候補地は飛鳥のはずれ。それよりも,やはり民宿がお勧めです。どこの民宿でも夕食に出される飛鳥鍋は,近年、観光用に考え出されたもので,正直に申しますと,村人はあまり好んで食べてはいません。古代のチーズ(ソ)を連想させる,牛乳を入れた鶏鍋です。
美味しいものといえば,みかん,柿,あけび,山菜,いちごや野菜。産地ではないですが,柿の葉寿司と,吉野川の鮎。吉野まで足をのばせば旨いイノシシやシカ料理も食べられます。夏の盛りは三輪そうめん,スィーツ好きの方には吉野の本葛をふんだんに使った葛餅など,味覚も楽しめます。
これは少し残念な話ですが,近年,飛鳥に来られる観光客から,「昔はよかったのに」と,お叱りを受けることが多くなってきました。というのも,まったく不要な太い道をいくつも通し,24時間チカチカ眩しい信号が増え,情緒のない芝生公園をあちこちに。奥飛鳥の風景を一変させて栢森,冬の川堤防工事も愚の骨頂。風景を壊しただけでなく,ホタルも激減してしまいました。万葉ミュージアム館のような箱モノも,飛鳥には似合いません。言われる通り,飛鳥の良さが年々消えてゆくようで,少し残念な気がしています。
しかし,流石に古人が都と定めた場所だけに,気の流れがとても良いです。地面の下には,まだ発見されていない歴史がいっぱい眠っていますし,飛鳥名物の奇妙な巨石も,まだいたるところにあるのでは。例えば坂田集落などの裏山に少し入っただけで,奇妙な巨石がゴロゴロ転がっています。まだ明日香にいらしたことのない方はぜひ乳白色のベールに包まれた歴史ロマンを体験しにいらしてください。
知られざる明日香の魅力
山口 康弘(大阪府大阪市)
「上記のテーマで書くように」と仰せつかったものの,ただ明日香に生まれ育ったというだけで,歴史知識も浅く,皆様にお伝えできるようなことなどありませんが,敢えて書き連ねてまいります。
毎年二月の第一日曜日,飛鳥坐神社で奇祭「おんだ祭り」が行われます。五穀豊穣を願う演舞は,滑稽,淫靡で,まさしく見もの。また演舞前後にも,あちらこちらで嬌声が響き渡ります。というのも,天狗,牛,翁の面を被った青年が,竹棒片手に観客たちを追い回し,そのお尻を遠慮なく叩いているではないですか。叩かれると,子宝が授かる,もしくはこの一年健康に過ごせる等のご利益があるそうですが,半端なく痛いですから要注意。しかし,スリル満点の参加気分が味わえる,とても楽しいお祭りです。ちなみに,飛鳥坐神社をお守りしている飛鳥さんは,折口信夫のおじいさんの生家でもあります。
祭りと言えば,秋の彼岸花祭も,お勧めです。山田洋次監督が日本の田舎100景に数えた奥飛鳥の棚田や,板葺の宮から天の香具山までの田園等,村中の稲穂が黄金色に輝く中,あぜ道には真っ赤な曼珠沙華。日が落ちると,村中のいたるところに灯篭が灯され,幽玄なこと,この上なし。
四季それぞれに魅力があります。
春は菜の花,桜にレンゲ草。初夏はホタルの乱舞。また,飛鳥川はカジカ蛙の産地で,笛の音のような美声を聞くことができます。木々の葉が色づく頃,田畑では野焼きの煙。牧歌的な夕景の後、きつね色した大きな満月。明日香は昔からお月見スポットとしても有名です
そうそう余談ですが,稲渕集落を少し上がったところにある飛鳥川上座宇須多岐比売命神社(日本で一番名前の長い神社としても有名)は,心霊スポットとして,村人にも恐れられています。私も子供の頃,神社の下あたりで,ボロボロの自転車を押して歩いてくる黒猫を肩に乗せた顔面蒼白の娘に出くわし,友達と泣き叫びながら逃げ去った記憶があります。お化けついでに言うのなら,祝戸にあるふんぐり山や,橘寺の仏頭山も,子供に恐れられていました。といっても,今時,幽霊を怖がる子供など, いないかも知れませんね。
眺望を楽しむのなら,甘橿の丘は外せません。大和三山を一望でき,明日香の里も
見下ろせます。また石舞台古墳の東側の丘を少し上がるだけで,二上山に沈む日を拝むこともできます。
宿泊施設に関していえば,星野グループが明日香に宿泊施設を作る計画が進んでいるようですが,候補地は飛鳥のはずれ。それよりも,やはり民宿がお勧めです。どこの民宿でも夕食に出される飛鳥鍋は,近年、観光用に考え出されたもので,正直に申しますと,村人はあまり好んで食べてはいません。古代のチーズ(ソ)を連想させる,牛乳を入れた鶏鍋です。
美味しいものといえば,みかん,柿,あけび,山菜,いちごや野菜。産地ではないですが,柿の葉寿司と,吉野川の鮎。吉野まで足をのばせば旨いイノシシやシカ料理も食べられます。夏の盛りは三輪そうめん,スィーツ好きの方には吉野の本葛をふんだんに使った葛餅など,味覚も楽しめます。
これは少し残念な話ですが,近年,飛鳥に来られる観光客から,「昔はよかったのに」と,お叱りを受けることが多くなってきました。というのも,まったく不要な太い道をいくつも通し,24時間チカチカ眩しい信号が増え,情緒のない芝生公園をあちこちに。奥飛鳥の風景を一変させて栢森,冬の川堤防工事も愚の骨頂。風景を壊しただけでなく,ホタルも激減してしまいました。万葉ミュージアム館のような箱モノも,飛鳥には似合いません。言われる通り,飛鳥の良さが年々消えてゆくようで,少し残念な気がしています。
しかし,流石に古人が都と定めた場所だけに,気の流れがとても良いです。地面の下には,まだ発見されていない歴史がいっぱい眠っていますし,飛鳥名物の奇妙な巨石も,まだいたるところにあるのでは。例えば坂田集落などの裏山に少し入っただけで,奇妙な巨石がゴロゴロ転がっています。まだ明日香にいらしたことのない方はぜひ乳白色のベールに包まれた歴史ロマンを体験しにいらしてください。
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