《自由広場》
私の量子ものがたり ②
ウロボロスの蛇
吉成 正夫(東京都練馬区)
自然界の階層(ウロボロスの蛇)
1979年にノーベル賞を受賞したシェルダン・L・グラショウ教授(素粒子物理学者,ボストン大学教授)は,自伝「クォークはチャーミング」の最後の章を「ウロボロス」で結んでいます。「ウロボロス」は、古代ギリシャ語で「尾を飲みこむ蛇」のことであり,円環が自己完結することから,循環性,永続性,死と再生などを意味します。こうしたイメージは,古代中国,アステカ,ネイティブ・アメリカンにも見られ,蛇の図の原形は, 紀元前1600年頃の古代エジプト文明までさかのぼり,古代ギリシャに伝えられたそうです(Wikipedia)。
量子力学の本を読んでいますと,グラショウはじめ素粒子学者たちは,ウロボロスの蛇に「自然界の階層」を重ね合わせています。実に簡潔明瞭な表示です。蛇の円環の中央(つまり下)に「人間」「生物」を置いて基準にします。単位は1cmです。尾の最先端は「クォーク」。尾に噛みつく頭は「宇宙」です。「人間」から尾に向かって,ミクロの世界です。「細胞」―「原子」(10⁻6)―「原子核」(10-12)―「クォーク」(10-18~10-24)とミクロ化が進みます。
次に「人間」から頭に向かってマクロの世界です。「地球」(106)―「太陽系」(1012)―「星雲」(1018)―「宇宙」(1024)で頭となります。
宇宙はまだまだ未知のままです。2013年3月,欧州宇宙機関はプランクの観測結果に基づいて,「ダークマター」は原子4.9%と併せて26.8%,「ダークエネルギー」は68.3%と推計しました。「ダーク」というのは「よく判らない」という意味ですから,宇宙の95%はまったく解明されていないことになります。しかし宇宙からニュートリノという素粒子が飛んできます。物質の極小値である素粒子と宇宙を飛来する素粒子,何か不思議な符号を感じます。蛇の頭が尾を咥えて円環を完成した古代のイメージは,現代の先端科学によって重要な意味付けをされました。そしてより重要なのは,円環の中心に「人間」および「生物界」が基準として位置づけされ,そこから極小へ極大へ,10±30の両翼を形づくっていることです。グラショウは尾を咥えこんだ頭に,ミクロとマクロの一体化,「大統一理論」と記しています。自然は簡潔にできているので量子力学と相対性理論の理論統合は必ずできるはずだとしています。
10の何乗と記されても,あまりピンときません。そこで私たちの身体感覚に合わせて,考えてみましょう。原子は10-12で,クォークは10-18ですから,原子はクォークの10の6乗倍になります。仮にクォークを10円硬貨としますと2.3㎝で、これの10の6乗倍は100万倍で,2万3千㎞に相当します。太平洋の一番長い距離はインドネシアからペルーまでで,それでも1万9000㎞ですから,「原子」という名の太平洋以上に広い海を,「クォーク」という名の10円硬貨が動き回っている,それが原子とクォークの関係なのです。
グラショウは最後の章で「人間の認識の神秘や記憶の変転ですら,明らかに共通の認識となっている物理法則によって説明されるべきものである。その説明を見出すことは、難しいことであり、面白い楽しみだろう」と結んでいます。
もっと平たく言えば,私たち人間や生物が生まれて「意識」を持ち,成長し,死んで行く,そのプロセスを解明する日がくると信じているのです。でも量子の不思議な世界を垣間見て感じることがあります。小さな量子たちが,観測者に反応してあたかも意思を持っているかのように動くとするのが量子力学です。それらが寄り集まった人間や生物が意識を持つのは当然ではないかという気がしてきます。
もう一つ, 量子力学から浮かび上がってくることは, 人間が認識できる視覚,聴
覚,嗅覚,触角,味覚などの五感は動物たちと比べてもきわめて狭い範囲に限られています。私たちは時間を含めた四次元世界が当然と思って暮していますが,物理学者たちは,量子を観察し実験した結果についてどのように「説明」したら整合性を保つことができるのかと「解釈問題」に頭を悩ませています。例えばその一つに「多世界解釈(パラレルワールド)」があります。この世界が実は多世界に枝分かれしているとしますと,量子の謎は一挙に解決されるのです(佐藤勝彦監修「図解 量子論」)!
私の量子ものがたり ②
ウロボロスの蛇
吉成 正夫(東京都練馬区)
自然界の階層(ウロボロスの蛇)
1979年にノーベル賞を受賞したシェルダン・L・グラショウ教授(素粒子物理学者,ボストン大学教授)は,自伝「クォークはチャーミング」の最後の章を「ウロボロス」で結んでいます。「ウロボロス」は、古代ギリシャ語で「尾を飲みこむ蛇」のことであり,円環が自己完結することから,循環性,永続性,死と再生などを意味します。こうしたイメージは,古代中国,アステカ,ネイティブ・アメリカンにも見られ,蛇の図の原形は, 紀元前1600年頃の古代エジプト文明までさかのぼり,古代ギリシャに伝えられたそうです(Wikipedia)。
量子力学の本を読んでいますと,グラショウはじめ素粒子学者たちは,ウロボロスの蛇に「自然界の階層」を重ね合わせています。実に簡潔明瞭な表示です。蛇の円環の中央(つまり下)に「人間」「生物」を置いて基準にします。単位は1cmです。尾の最先端は「クォーク」。尾に噛みつく頭は「宇宙」です。「人間」から尾に向かって,ミクロの世界です。「細胞」―「原子」(10⁻6)―「原子核」(10-12)―「クォーク」(10-18~10-24)とミクロ化が進みます。
次に「人間」から頭に向かってマクロの世界です。「地球」(106)―「太陽系」(1012)―「星雲」(1018)―「宇宙」(1024)で頭となります。
宇宙はまだまだ未知のままです。2013年3月,欧州宇宙機関はプランクの観測結果に基づいて,「ダークマター」は原子4.9%と併せて26.8%,「ダークエネルギー」は68.3%と推計しました。「ダーク」というのは「よく判らない」という意味ですから,宇宙の95%はまったく解明されていないことになります。しかし宇宙からニュートリノという素粒子が飛んできます。物質の極小値である素粒子と宇宙を飛来する素粒子,何か不思議な符号を感じます。蛇の頭が尾を咥えて円環を完成した古代のイメージは,現代の先端科学によって重要な意味付けをされました。そしてより重要なのは,円環の中心に「人間」および「生物界」が基準として位置づけされ,そこから極小へ極大へ,10±30の両翼を形づくっていることです。グラショウは尾を咥えこんだ頭に,ミクロとマクロの一体化,「大統一理論」と記しています。自然は簡潔にできているので量子力学と相対性理論の理論統合は必ずできるはずだとしています。
10の何乗と記されても,あまりピンときません。そこで私たちの身体感覚に合わせて,考えてみましょう。原子は10-12で,クォークは10-18ですから,原子はクォークの10の6乗倍になります。仮にクォークを10円硬貨としますと2.3㎝で、これの10の6乗倍は100万倍で,2万3千㎞に相当します。太平洋の一番長い距離はインドネシアからペルーまでで,それでも1万9000㎞ですから,「原子」という名の太平洋以上に広い海を,「クォーク」という名の10円硬貨が動き回っている,それが原子とクォークの関係なのです。
グラショウは最後の章で「人間の認識の神秘や記憶の変転ですら,明らかに共通の認識となっている物理法則によって説明されるべきものである。その説明を見出すことは、難しいことであり、面白い楽しみだろう」と結んでいます。
もっと平たく言えば,私たち人間や生物が生まれて「意識」を持ち,成長し,死んで行く,そのプロセスを解明する日がくると信じているのです。でも量子の不思議な世界を垣間見て感じることがあります。小さな量子たちが,観測者に反応してあたかも意思を持っているかのように動くとするのが量子力学です。それらが寄り集まった人間や生物が意識を持つのは当然ではないかという気がしてきます。
もう一つ, 量子力学から浮かび上がってくることは, 人間が認識できる視覚,聴
覚,嗅覚,触角,味覚などの五感は動物たちと比べてもきわめて狭い範囲に限られています。私たちは時間を含めた四次元世界が当然と思って暮していますが,物理学者たちは,量子を観察し実験した結果についてどのように「説明」したら整合性を保つことができるのかと「解釈問題」に頭を悩ませています。例えばその一つに「多世界解釈(パラレルワールド)」があります。この世界が実は多世界に枝分かれしているとしますと,量子の謎は一挙に解決されるのです(佐藤勝彦監修「図解 量子論」)!
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「日本語」って不思議な言葉ですね!(その2) |
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