☆ふるさと紹 介
富 山 の 食 物 語
木村 孝(富山県富山市)
「お母さん、腹減った! 何かない?」 学校から帰り玄関を開けるやいなや蛍は奥に向かって叫んだ。(4月生まれの蛍。産声を上げた日,ホタルイカ豊漁のニュースから父が命名したと聞いているその名前。安直だけどわりと気に入っている。)……アレッ? 返事がない。いつもはスーパーのマネキンでならした大声で「夕飯まで待てないの。 コロッケ買ってあるから自分で温めて食べなさい!」 が聞こえるはずなのに。〈平成26年・一人当たりコロッケ消費18.6個は全国第3位。〉ちなみに安売りで有名な別のスーパーではコロッケは5個100円で販売している。コロッケは育ち盛りの子を持つ家の家計には有難いおやつなのである。台所にも母の姿が見つからない。ふと見るとテーブルの上に置手紙。「山田さん急にコケタ(休みのこと)。今日は仕事。6時には帰る。」母はパートに出ているようだ。〈共働き世帯割合35%は全国第3位。夫婦で働いてしっかり稼いで立派な家を建てる=持ち家率全国第1位。住宅の平均面積も全国第1位。〉
それにしてもお腹空いた。と,勝手知ったる我が家の冷蔵庫。冷凍扉を開けて取り出したのは大好きなチョコモナカジャンボ。14歳はお年頃,お腹の辺りを一瞬気にしながらも甘いものの誘惑には勝てない。毎週水曜日のアイス半額デーにまとめ買いしてくるのが悪い! 太るのはママのせいー! と悪態をつきながらもジャンボはもう口の中。いつも立山家の冷凍庫にはアイスが満タンに入っている。〈アイス消費支出,2016年金沢を抜いて第1位・甘いものついでにプリンの消費も第1位。〉
やがて母が帰宅。医薬品会社に勤めている父も帰宅し,楽しい夕食が始まった。〈医薬品の生産量第1位。〉「今日は急な仕事だったからお惣菜ばかりだけど我慢してね。」「また揚物―。」と膨れつつも食べ盛りの蛍にはトンカツは嬉しい。〈トンカツ消費支出第2位。〉その横にはママの好物の白海老のかき揚げも盛付けられている。ママはお惣菜の天ぷらや揚物も担当しており,揚物は家で作るよりたっぷりの油で揚げるスーパーの方が絶対美味しいが口癖である。白海老は4月~11月に富山湾で獲れる体長5~8㎝の薄いピンクがかった透明のエビ。その美しさから富山湾の海の宝石と呼ばれている。パパには大好きな日本酒をつけて。肴にはガンドのお刺身をと昆布〆。(ガンドは成長魚ブリのブリになる手前の呼び名。ツバイソ・フクラギ・ガンド・ブリの順に成長していく。昆布〆は富山でサスと呼ぶカジキを昆布で〆たお刺身)更にはニシンの昆布巻,赤巻という渦巻き状の蒲鉾まで用意してある。そろそろ油ものがきつくなってきたという父親は酒と魚があればご満悦なのである。母の手作り料理も大好きだがこんな帰宅後わずか15分で用意したお惣菜ばかりのおかずも蛍は好きだ。 〈2016年日本酒好きランキング第3位。お刺身消費第2位。ブリと言えば氷見の寒ブリが有名だが,冬場以外は九州産の養殖ブリもよく食べる。もちろんブリ消費は第1位。昆布は北海道産,江戸の昔富山は北前船の寄港地で京都を抜いて消費第1位。〉
「あっママ,明日は防災訓練で給食ないからお弁当作ってね。それとお水のペットボトルあった?」「お弁当? 了解。お水ペットはないけど水筒に山のお水持っていったら?」冷凍庫にはお弁当食材の冷凍食品がどっさり入っている。急なお弁当リクエストにも全くあわてる様子もない。富山のドラッグストアでは何故か冷凍食品を毎日メーカー希望小売価格の半額で販売している。母の勤めるス-パーでも毎週土曜日に半額か6割引きで販売している。それでアイス同様冷凍食品もいつでも満タン常備なのである。〈スーパーやコンビニのお弁当消費支出は全国最下位の47位。ミネラルウォーターは46位。〉富山はお弁当持参の家庭が多い。水道水が美味しいせいか水を買う習慣も少ない。最近はお米やお茶用に豊富な山の湧水を汲みに行く家庭も多い。ちなみに立山家で毎週末,夫婦揃って家から車で20分ほどの山の湧水を汲みに行っている。〈過去90年間に震度4以上の地震観測が12回。5以上はゼロ。地震被害の少ない都道府県ランキングは佐賀県に次いで第2位。〉
富山の平凡な家庭,立山家のある日の食卓風景を覗いてみました。データの出典はさまざま,年度によって多少の誤差はあると思いますが我がふるさと富山の食卓はこんな感じじゃないかな? 海の幸・山の幸が豊富に恵まれ,新鮮で安く手に入れられる。食材においてはまさに文字どおり富山(とみのやま)。しかし普段の食生活に富山の労働事情,住宅事情,さらには食を提供するスーパーの販売戦略事情も大いに富山の食を彩っています。最後に,寒ブリで有名な氷見市では毎週土曜日,スーパーで買い物すれば卵1パックを無料サービスで手に入れられます。こんな食で得する富山県に住んでみたいと思いませんか?
富 山 の 食 物 語
木村 孝(富山県富山市)
「お母さん、腹減った! 何かない?」 学校から帰り玄関を開けるやいなや蛍は奥に向かって叫んだ。(4月生まれの蛍。産声を上げた日,ホタルイカ豊漁のニュースから父が命名したと聞いているその名前。安直だけどわりと気に入っている。)……アレッ? 返事がない。いつもはスーパーのマネキンでならした大声で「夕飯まで待てないの。 コロッケ買ってあるから自分で温めて食べなさい!」 が聞こえるはずなのに。〈平成26年・一人当たりコロッケ消費18.6個は全国第3位。〉ちなみに安売りで有名な別のスーパーではコロッケは5個100円で販売している。コロッケは育ち盛りの子を持つ家の家計には有難いおやつなのである。台所にも母の姿が見つからない。ふと見るとテーブルの上に置手紙。「山田さん急にコケタ(休みのこと)。今日は仕事。6時には帰る。」母はパートに出ているようだ。〈共働き世帯割合35%は全国第3位。夫婦で働いてしっかり稼いで立派な家を建てる=持ち家率全国第1位。住宅の平均面積も全国第1位。〉
それにしてもお腹空いた。と,勝手知ったる我が家の冷蔵庫。冷凍扉を開けて取り出したのは大好きなチョコモナカジャンボ。14歳はお年頃,お腹の辺りを一瞬気にしながらも甘いものの誘惑には勝てない。毎週水曜日のアイス半額デーにまとめ買いしてくるのが悪い! 太るのはママのせいー! と悪態をつきながらもジャンボはもう口の中。いつも立山家の冷凍庫にはアイスが満タンに入っている。〈アイス消費支出,2016年金沢を抜いて第1位・甘いものついでにプリンの消費も第1位。〉
やがて母が帰宅。医薬品会社に勤めている父も帰宅し,楽しい夕食が始まった。〈医薬品の生産量第1位。〉「今日は急な仕事だったからお惣菜ばかりだけど我慢してね。」「また揚物―。」と膨れつつも食べ盛りの蛍にはトンカツは嬉しい。〈トンカツ消費支出第2位。〉その横にはママの好物の白海老のかき揚げも盛付けられている。ママはお惣菜の天ぷらや揚物も担当しており,揚物は家で作るよりたっぷりの油で揚げるスーパーの方が絶対美味しいが口癖である。白海老は4月~11月に富山湾で獲れる体長5~8㎝の薄いピンクがかった透明のエビ。その美しさから富山湾の海の宝石と呼ばれている。パパには大好きな日本酒をつけて。肴にはガンドのお刺身をと昆布〆。(ガンドは成長魚ブリのブリになる手前の呼び名。ツバイソ・フクラギ・ガンド・ブリの順に成長していく。昆布〆は富山でサスと呼ぶカジキを昆布で〆たお刺身)更にはニシンの昆布巻,赤巻という渦巻き状の蒲鉾まで用意してある。そろそろ油ものがきつくなってきたという父親は酒と魚があればご満悦なのである。母の手作り料理も大好きだがこんな帰宅後わずか15分で用意したお惣菜ばかりのおかずも蛍は好きだ。 〈2016年日本酒好きランキング第3位。お刺身消費第2位。ブリと言えば氷見の寒ブリが有名だが,冬場以外は九州産の養殖ブリもよく食べる。もちろんブリ消費は第1位。昆布は北海道産,江戸の昔富山は北前船の寄港地で京都を抜いて消費第1位。〉
「あっママ,明日は防災訓練で給食ないからお弁当作ってね。それとお水のペットボトルあった?」「お弁当? 了解。お水ペットはないけど水筒に山のお水持っていったら?」冷凍庫にはお弁当食材の冷凍食品がどっさり入っている。急なお弁当リクエストにも全くあわてる様子もない。富山のドラッグストアでは何故か冷凍食品を毎日メーカー希望小売価格の半額で販売している。母の勤めるス-パーでも毎週土曜日に半額か6割引きで販売している。それでアイス同様冷凍食品もいつでも満タン常備なのである。〈スーパーやコンビニのお弁当消費支出は全国最下位の47位。ミネラルウォーターは46位。〉富山はお弁当持参の家庭が多い。水道水が美味しいせいか水を買う習慣も少ない。最近はお米やお茶用に豊富な山の湧水を汲みに行く家庭も多い。ちなみに立山家で毎週末,夫婦揃って家から車で20分ほどの山の湧水を汲みに行っている。〈過去90年間に震度4以上の地震観測が12回。5以上はゼロ。地震被害の少ない都道府県ランキングは佐賀県に次いで第2位。〉
富山の平凡な家庭,立山家のある日の食卓風景を覗いてみました。データの出典はさまざま,年度によって多少の誤差はあると思いますが我がふるさと富山の食卓はこんな感じじゃないかな? 海の幸・山の幸が豊富に恵まれ,新鮮で安く手に入れられる。食材においてはまさに文字どおり富山(とみのやま)。しかし普段の食生活に富山の労働事情,住宅事情,さらには食を提供するスーパーの販売戦略事情も大いに富山の食を彩っています。最後に,寒ブリで有名な氷見市では毎週土曜日,スーパーで買い物すれば卵1パックを無料サービスで手に入れられます。こんな食で得する富山県に住んでみたいと思いませんか?
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疑わしきは罰す |
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古希過ぎて,直木賞読破 ⑴ |