有限会社 三九出版 - 名言集は手づくりがよい


















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☆〔新作●現代ことわざ〕 

            名言集は手づくりがよい 

             山下 定利(千葉県千葉市) 

40歳代に「心に残る言葉」と題する,所謂名言集を拵えた。新聞や書籍,ラジオやテレビなどから, 数年をかけて書き留めてきた, 先達の言葉をまとめ整理したもので,50余句を収めている。この名言集は自分用の手づくりで,長年繰り返し読んできても,飽きることがなかった。
先達の言葉を集めるようになったのは,わが人間性に由来する。生来,気弱でシャイで引っ込み思案,ややもすれば怠けたがり,安逸に走ろうとする。つい負け惜しみを言い,時に怒りっぽく,ホラも吹き,歳を重ねても寂しがり屋ときている。これらを自認していたからこそ,先達の言葉に希望や安らぎなどを,求めたのであった。
登場する先達は,実業人や文人,科学者など,その言葉は含蓄深い。短句ながら明快,簡潔で,経営の神髄や人生を語って鋭く,感性が光る。無論,わが思惟の及ばぬものである。
手作りとは言い条,名言集なる体裁に仕上がると,わが助平根性が蠢きだす。つまり「これを活用したい!」で,まず眠気防止に用いた。会議での居眠り常習の社員に,「眠気を催したら読め! 繰り返し読め」と説教付きで渡す。効き目は怪しいが,その後「名言集」は版権者?の了解なしに,リプリントされ,独り歩きすることになる。もう一つの活用例は,代理店での社長会での配布であった。名言集の中の電通(広告会社)の『鬼十則』と,昆虫記の『松の行列毛虫とシルクロード』を敷衍し,経営に新感覚を,と説いた。『鬼十則』は,創業社長が社員に贈った檄文。『昆虫記』はファーブルの実験を我流に解釈して,リーダーの責任を説き,「安全とされた道(虫が吐く糸)が,将来も約束されるとは限らない」と弁じた。時は第二次オイルショックの最なかで,この頃を境に,日本の経済は高度成長期から安定成長へと変化し始める。
わが名言集は,その後約40年近く読み続けるも,色褪せしていない。その理由は何よりも先達の言葉の力だ。第二は,「手づくり」にある。名言集は多いが,感銘しても傍線を引くくらいで,収集・整理するほどの人は,少ないと思う。第三の理由は,「名言」に出会った時代の自分に,思いを馳せるからではないか。
やはり「名言集」は手づくりが良いのである。 
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