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東日本大震災私は忘れない 

             今,できること

             天野 暢子(千葉県柏市)

我が家には非常用持ち出し袋が3つある。1つは父から譲ってもらった登山用の青いリュックサックを非常用にしたもので,主に子供グッズが詰め込まれている。私には2歳の娘がいる。もう2つは家族用兼大人用。楽天市場で購入した2個セットの防災リュックサックで,「3日間を生きる防災セット」としてネットランキングで上位だったため購入した。ヘルメットやラジオ,懐中電灯,レスキューシート,簡易トイレ,非常食に水などが入っている。

東日本大震災の当時は,まだ子供はいなかった。私は都内で夫と二人で暮らしており,銀座の法律事務所で働いていた。地震当日は私も夫も自宅まで歩いて帰宅したものである。一瞬にして日常生活を奪ってしまう地震の恐ろしさを知り,それなりに防災セットを揃え家具の転倒防止策等を講じていた。約3年後,千葉の郊外に引っ越した。 直後に子供が生まれ,毎日が慌ただしく過ぎた。「災害対策もちゃんとしなきゃなぁ」と思いつつ後回しにする日々。そんな中,昨年4月に熊本地震が起きた。地震の怖さを思い出し,インターネットで防災グッズを調べ始めた。
娘はまだおむつも取れていない。子供用の非常用リュックサックには,紙おむつ,着替え,パン,瓶詰の幼児食,おやつ,ティッシュなどの日用品,タオルにゴミ袋などが入れてある。おやつは娘の大好きなビスコというビスケットだ。「ビスコは賞味期限が長いから備蓄にもいいよ」と東日本大震災の後に教えてもらった。
子供用の非常用リュックサックは,2カ月に1度くらいのペースで開いている。子供は洋服のサイズがすぐに変わる。季節も変わるので,時々中身を入れ替えている。後は食料品。賞味期限切れを防ぐためもあるけれど,「パンを買い忘れて切らしちゃった。どうしよう。あっ,リュックサックの中にパンがある! あれを使おう」と,買い置き品として意外と重宝しているのだ。 おっちょこちょいの母親としてはありがたい。
そしてこのリュックサックは, 絶対に子供が見ていない隙に開かなければならない。子供に見つかったら最後,嬉々として中身を全部取り出し,一個一個「なぁに?」と質問攻めにするからだ。2歳児にとって珍しいものは全ておもちゃだ。お菓子やパンも食べたくなるに違いないので,「昼寝しているうちに!」と手早く入れ替えている。
本当の非常時が来ませんようにと祈りながら,毎回リュックサックのファスナーを閉じている。
東日本大震災の後,義弟家族は,神奈川県から島根県へ移住した。夫婦ともに島根県出身だったこともあるが,「関東の学校給食では東北地方の食材が多く使われていて,それを子供に食べさせたくないから」というのも理由の1つだった。
義弟夫婦は,食品の放射線量に対してかなり敏感だ。震災直後は特にそうで,夫の実家に泊まりみんなで夕食を頂く際も,台所で厳しく食材のチェックをしていた。特にきのこ類はどこの産地のものでも食べさせない。「原木が汚染されているから」とのこと。しかし姑はそれを知りながらも「やっぱり煮しめにはしいたけの出汁がないとおいしくないから」と,食卓にしいたけを出す。「島根の農家が育てたしいたけなんだから,大丈夫に決まっている」とは姑の弁。そしてそれを聞かされる私と夫。という光景が年末になると,毎年繰り広げられている。
我が家はそこまで敏感ではない。きのこは娘の好物なので食べさせている。赤ちゃんの時,粉ミルクの水は水道水ではなくミネラルウォーターを使っていたが,徐々に水道水も飲ませるようになっていった。義弟夫婦を見ていると,うちももう少し,注意深くした方がいいのかと思うこともある。子供の健康は守らなくてはならない。「外国産は安全だからOK」という彼らの考え方には疑問を感じることもあるけれど,何が正しくて何が間違っているのか,答えが出るのは数十年後になるだろうか。

東日本大震災からもうすぐ6年。先日,久しぶりに募金をした。「人は悲しいくらい忘れていく生き物」とMr.Childrenの歌にあったように,大震災の記憶が徐々に風化しつつあるのを感じる。
今年は去年よりも,東日本大震災関連のニュースに注目しよう。来るべき震災に備えて地域の防災イベントに参加し,備えを見直そう。いざ震災が起きたときにできるだけ人に迷惑をかけたくないし,できれば人を助けられる存在になりたい。そして家族みんなが健康で元気に過ごせるように努めよう。また募金もしよう。
今の自分にできることを見極め,それを実行していこうと私は決めた。
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