有限会社 三九出版 - 経済成長への期待


















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☆《自由広場》 

             経済成長への期待 

             吉成 正夫(東京都練馬区) 

安倍首相が「三本の矢」を放ってから3年余り経ちますが,一本目の矢の金融政策だけが頑張っているだけで,肝心の成長戦略が一向に見えてきません。成長戦略は一朝一夕に達成できないのは判りますが,それにしてもやることが遅すぎます。
経済が成長するには「労働力」「資本」「技術」の水準を高める必要があります。日本は少子高齢化の先進国で,今後人口は大幅に減少していくと見込まれています。ですからゼロ成長を維持するだけでも大変な努力が要ります。人口増加に期待できなければ,労働者一人当たりの生産性を高めるしかありません。ここ数年,猛烈なスピードでIT化が進みました。各国とも,国際競争を勝ち抜くために自国のIT化に必死に取り組んでいます。米国では,2011年にGEを中心とする中核企業が「インダストリアル・インターネット」を推進しています。製造業に留まらず,エネルギー,ヘルスケア,公共,運輸の領域も対象にコンピュータ空間と現実世界が連携し飛躍的な価値創造を目指そうとの試みです。ドイツでは,2013年に官民挙げたプロジェクトとして「インダストリー4.0」を打ち出しました。ものづくりの現場に人工知能などのITを統合化してダイナミックな国づくりを目指しています。
このような主要国の動きに対して,日本はどうでしょうか。第二次安倍内閣発足直後の2013年6月に「日本再興戦略」が打ち出されましたが,やや総花的な面は否めませんでした。2016年6月に「2016日本再興戦略」で,第4次産業革命を強く打ち出しました。 「IoT・ビッグデータ・AI・ロボット」で付加価値を創出しようとする試みです。本年9月には,安倍首相を議長とする「未来投資会議」を開きました。こうした構造改革がたびたび打ち出されていても, 経済成長は0%の低空飛行のままです。「実効性に疑問符」とか「過去の会議の焼き直し」というマスコミの批判は当然でしょう。ただ,「未来投資会議」では,過去3年間の実績を振り返り,国際水準と対比して率直に反省しているのは評価されます。これだけの長期政権になるともはや責任回避はできません。日本の国際競争力は年々ランクを下げていますし,労働生産性に関しては低水準横ばいのままで,「G7の中で20年連続最下位」の実績は強烈パンチです(同会議「資料4」から)。やらなければならないことは判っているのになぜできないのでしょう。私の理解では,第一に,日本全体が内向きであること。第二に,「出る杭を打つ」傾向が強いこと(その証拠にベンチャービジネスがほとんど実っていません),第三に,予算が福祉・介護に回り若者への支援が不足していること,等が挙げられます。私たち後期高齢者の世代はスマートフォンを持つ人はほとんどいなくて,ガラケー(ガラパゴス携帯)を何とか操作できる程度です。いまの幼児は生まれた時から,最新式のITやゲーム機に囲まれて育っています(デジタル・ネイティブ)から,中高年と発想が違うのは当然です。教育現場のIT化も大切ですが,幼い時から好奇心を持って自ら調べていく教育こそ重視されるべきではないでしょうか。GDPに占める教育の公的支出はOECD32ヵ国で最下位でした(2012年)。教育を軽視して将来の展望は期待できません。一にも二にも教育です。
いま,地方創生,介護・医療,農業の生産性向上が叫ばれていますが,この領域こそビッグデータや人工知能が活躍する領域です。話は飛びますが,アフリカは54の主権国家があって,それぞれ厳しい歴史を抱えています。道路・鉄道・電力などのインフラが整備されていずバラバラに孤立している状態にあっても,ケニアの女性は,乳牛の「発情周期,搾乳,市場」の情報を提供するアプリで小さな農家の収入が大幅に増えました。タンザニアでは29歳の青年がタンザニア全土の穀物輸入,貯蔵,分配,消費を監視するアプリを開発し,生産性がアップしました(アレック・ロス著「未来化する社会」)。このように現在のIT技術は発想次第で付加価値を一気にランクアップできるのです。アフリカでできることが日本にあっては「高齢化」「地方消滅」と諦めるのは恥ずかしいことです。人工知能やビッグデータは安いコストで個々人の差異に応じた便益を提供できるツールです。日本の抱える問題を逆手に取って大幅に生産性を高め豊かな国づくりをするチャンスです。IT技術では,米国のグーグル,アマゾン,アップル,フェイスブックなどに大きく立ち遅れました。幸い,海外に比して人工知能への関心は高く,量子コンピュータも日本発の開発です。日本独自の感性,応用技術が期待されます。いま,官民挙げて取り組んでいるITのプロジェクトが情報の共有化や研究促進などの効果を発揮しつつあるように感じます。その証左に人工知能やビッグデータを使った商品開発の記事が新聞に掲載されない日がありません。気が付いたら日本が成長軌道に乗っていたという日が来ることを願っています。 
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