☆《自由広場》
みえていないものを よくきく
瀬古 文男(愛知県名古屋市)
1.御嶽山の噴火災害の教訓
2014年9月27日は,御嶽山噴火口の近く,九合半の山小屋「覚明堂」におりました。廃業し閉鎖していた避難小屋再興のため,ボランティアにて前年より修繕作業を行い,やっと遭難を未然に防ぐ小屋として運営できる体制が整った矢先のことでした。多くの人の避難小屋として機能したことは幸いでしたが,63名の犠牲者と69名の怪我人を出し,火山噴火による最大の災害となりました。
ここで学んだ教訓は沢山あるはずですが, 未だに心の復興は, 進展しておりません。災害を大きくした原因の一つに,国~県~市町村のタテ,ヨコの連携,官・宗・産・学・民の「コミュニケーションのミス」があったことは明白なことです。コミュニケーションのあり方を改善し,顔の見える防災対策を講じないと災害による犠牲者を再び生むことになるやもしれません。
2.コミュニケーションの落とし穴(ミゾ)
私たちは通常,人の言うことを自分の聞きたいように聞いています。自分独自のフィルター(価値観や先入観,既成概念,考え方)を通して理解(誤解)してしまっています。一つ聞くと頭が勝手に連想してしまい,話し手の本意はどこへやらです。
また,情報伝達の方法として携帯のメールに頼る時代ですが,文章能力の高い方は別にして,微妙なニュアンスは相手に伝わるかどうか甚だ疑問です。顔を見てハートtoハートで本音の会話をしてこそ連帯意識は共有され,危機意識も行動に結びつくものと思います。人為的災害を未然に防止するために,安易な方法をとり「コミュニケーションのミゾ」をつくってしまわないことが賢明なことです。
3.みえていないものを よくきく
私たちの目にみえていないものは,みえているものより重要なものが多いのですが,捉えにくくわからないとして放置されがちです。
みえていないものの代表は「いのちの尊さ」「魂」「心の叫び」です。世の荒ぶ原因は,いのちを軽んずる「心の荒廃」です。心のいたみ,つぶやき,言いたがっていること等,あまり真剣に聞いてもらえていないことが多いと思います。
目にみえる「経済の発展」「利便性の追求」が優先し過ぎて理不尽な争いごとを多くし,目にみえない人のいのちを軽んずる社会の風潮を大きくしてしまっています。人の心の中の思いをよく聴いてコミュニケーション力を深耕することは,自分自身や自然との共感も豊かになり,心満たされるばかりか様々なリスクを未然に解消し,災害から周りの互いの命を守ることにも繋がるのではないでしょうか。
4.文明と文化の発展のバランスを欠いた世
文明の発展は快適さ,快楽さを提供してくれますが対立関係も強くします。一方,みえざるものの表現を追求する文化の発展は心の深まり,安心安全に寄与します。このバランスを欠いている現状を憂えます。無差別残忍な殺人事件,想定外の一言で謝罪なしの責任回避,核の脅威を知りながら経済優先の核使用がまかり通る等々,心が病んでいるとしか思えない荒んだひずみの多い文明優先競争社会です。
火災時の煙の怖さ,地震津波の怖さ,噴石やガス爆風の怖さ,放射能拡散の怖さ,集中豪雨・土石流の怖さ,交通事故の怖さ,人の犯罪意識の怖さ,等々に対し日常では危機感も薄く無防備です。実際に起きた事象の学習によってある程度認識しておりますが,同時に自分だけは大丈夫と自分に言いきかせてもいます。究極の世界を味わうような文化的学習によって本当の怖さを知って頂くことを望みます。
5.危機意識の共有
人は日常的に先を読んで,危機を回避し生きる道を講じています。だからこそ「いま」無事でおられます。もちろん,人の支え,神仏の加護,運もあるかもしれません。私は500回を超える集団登山のリーダーを務めてきました。その折には常に最悪のシナリオを想定して準備をし,危機意識を高くして細心の注意を払い登山に臨みました。最も大切にしていることは,登山下山を通じて全員が最後まで「いのちを燃やし」「集中力」を切らさないことです。そして,異常を察知した場合の「いのち」を守る俊敏な決断と行動です。「命がけの覚悟」を持って取り組んでおりました。
野外活動に限らず,災害復興にしろ,防災対策,観光事業にしろ,人の「いのちの尊さ」を重視し,「みえていないものを よくきくよう」連携を密にして,危機意識を強く共有して想定外をつくらないよう取り組めば未来への活路は開かれると期待します。
みえていないものを よくきく
瀬古 文男(愛知県名古屋市)
1.御嶽山の噴火災害の教訓
2014年9月27日は,御嶽山噴火口の近く,九合半の山小屋「覚明堂」におりました。廃業し閉鎖していた避難小屋再興のため,ボランティアにて前年より修繕作業を行い,やっと遭難を未然に防ぐ小屋として運営できる体制が整った矢先のことでした。多くの人の避難小屋として機能したことは幸いでしたが,63名の犠牲者と69名の怪我人を出し,火山噴火による最大の災害となりました。
ここで学んだ教訓は沢山あるはずですが, 未だに心の復興は, 進展しておりません。災害を大きくした原因の一つに,国~県~市町村のタテ,ヨコの連携,官・宗・産・学・民の「コミュニケーションのミス」があったことは明白なことです。コミュニケーションのあり方を改善し,顔の見える防災対策を講じないと災害による犠牲者を再び生むことになるやもしれません。
2.コミュニケーションの落とし穴(ミゾ)
私たちは通常,人の言うことを自分の聞きたいように聞いています。自分独自のフィルター(価値観や先入観,既成概念,考え方)を通して理解(誤解)してしまっています。一つ聞くと頭が勝手に連想してしまい,話し手の本意はどこへやらです。
また,情報伝達の方法として携帯のメールに頼る時代ですが,文章能力の高い方は別にして,微妙なニュアンスは相手に伝わるかどうか甚だ疑問です。顔を見てハートtoハートで本音の会話をしてこそ連帯意識は共有され,危機意識も行動に結びつくものと思います。人為的災害を未然に防止するために,安易な方法をとり「コミュニケーションのミゾ」をつくってしまわないことが賢明なことです。
3.みえていないものを よくきく
私たちの目にみえていないものは,みえているものより重要なものが多いのですが,捉えにくくわからないとして放置されがちです。
みえていないものの代表は「いのちの尊さ」「魂」「心の叫び」です。世の荒ぶ原因は,いのちを軽んずる「心の荒廃」です。心のいたみ,つぶやき,言いたがっていること等,あまり真剣に聞いてもらえていないことが多いと思います。
目にみえる「経済の発展」「利便性の追求」が優先し過ぎて理不尽な争いごとを多くし,目にみえない人のいのちを軽んずる社会の風潮を大きくしてしまっています。人の心の中の思いをよく聴いてコミュニケーション力を深耕することは,自分自身や自然との共感も豊かになり,心満たされるばかりか様々なリスクを未然に解消し,災害から周りの互いの命を守ることにも繋がるのではないでしょうか。
4.文明と文化の発展のバランスを欠いた世
文明の発展は快適さ,快楽さを提供してくれますが対立関係も強くします。一方,みえざるものの表現を追求する文化の発展は心の深まり,安心安全に寄与します。このバランスを欠いている現状を憂えます。無差別残忍な殺人事件,想定外の一言で謝罪なしの責任回避,核の脅威を知りながら経済優先の核使用がまかり通る等々,心が病んでいるとしか思えない荒んだひずみの多い文明優先競争社会です。
火災時の煙の怖さ,地震津波の怖さ,噴石やガス爆風の怖さ,放射能拡散の怖さ,集中豪雨・土石流の怖さ,交通事故の怖さ,人の犯罪意識の怖さ,等々に対し日常では危機感も薄く無防備です。実際に起きた事象の学習によってある程度認識しておりますが,同時に自分だけは大丈夫と自分に言いきかせてもいます。究極の世界を味わうような文化的学習によって本当の怖さを知って頂くことを望みます。
5.危機意識の共有
人は日常的に先を読んで,危機を回避し生きる道を講じています。だからこそ「いま」無事でおられます。もちろん,人の支え,神仏の加護,運もあるかもしれません。私は500回を超える集団登山のリーダーを務めてきました。その折には常に最悪のシナリオを想定して準備をし,危機意識を高くして細心の注意を払い登山に臨みました。最も大切にしていることは,登山下山を通じて全員が最後まで「いのちを燃やし」「集中力」を切らさないことです。そして,異常を察知した場合の「いのち」を守る俊敏な決断と行動です。「命がけの覚悟」を持って取り組んでおりました。
野外活動に限らず,災害復興にしろ,防災対策,観光事業にしろ,人の「いのちの尊さ」を重視し,「みえていないものを よくきくよう」連携を密にして,危機意識を強く共有して想定外をつくらないよう取り組めば未来への活路は開かれると期待します。
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