有限会社 三九出版 - 自然災害と原発の人災事故


















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☆東日本大震災 私は忘れない

            自然災害と原発の人災事故

            本田 哲郎(鹿児島県日置市)

東日本大震災に関して「忘れてはいけないこと」として,次の二点が挙げられる。
その第一は今回の地震発生による地震そのものの振動,揺れによって地割れや建物の倒壊などが発生したほかに,最も顕著に現れた現象は予想をはるかに超える巨大な津波が発生し,それも広範囲に周辺各地に押し寄せたことで,人も建屋も地域社会さえももろともに甚大な被害,損害を与えてしまったことである。
東北地方は以前から大地震が頻発しており,度々津波の被害を被っているので,当時,他地域に比べて防潮堤などの設備が整っていた場所でありながら,今回の大地震による津波の規模はまさしく想定外の巨大さであり,その影響は計り知れないものとなった。特に東北から関東に及ぶ広範な海沿い地域への被害規模も強大であり,その津波によって亡くなられた方や今も行方不明の方々が多くおられ,これら人的被害および建屋の流出による地域社会の崩壊など,誠に悲惨な結果が特筆される。
このような巨大地震は地球の地殻変動によって惹起された自然現象であり,その地震や津波による被害は防災体制の整備の確立によりある程度の防禦が可能であるが,究極的には人間の英知をもってしてもすべての巨大地震に対応できることは不可能である。まさしく「自然現象としての自然災害」と言えるであろう。
しかし,今後も地震大国である日本に於いて南海トラフ地震なども懸念されており,充分な国民的合意の下に国家の施策として継続的な地震・津波対策などの防災対策,地域づくり対策などが構築されなければならない。自然災害であってもその備えとしてこれらの諸対策は平常時から充分に施行してゆかなければならない。
第二の問題点としては,この地震による津波によって海岸近くに建設,稼働していた東電の福島第二原子力発電所が完全に破壊されて,その心臓部分である炉心にメルトダウンを引き起こし,その結果,原子炉から多量の放射能が広範に周辺各地に飛散したことで,地域社会のみならず海水まで放射能汚染を引き起こしたことである。
放射能の濃度の高い地域が続出し,多くの市町村の住民が避難を余儀なくされたこと以外に町全体の移転も避けられない状況となり,地域社会がなくなってしまった町も今やゴーストタウン化場所もあるほどである。これら放射能汚染によって図らずも今まで住み慣れた地域を去らなくてはならない方々の避難のご苦労は,この地震のために亡くなられた方々を含め, 心を痛めることである。生活の基盤である住居を失い,その上,昔から市・町・村を形成し慣れ親しんできた社会環境を破壊され,従来の住まいを離れて今も仮設住宅などに移住を強いられている方々がいかに多いことか?! さらにその住居問題に加えて,肝心の仕事や収入の基になる産業社会分野へもその変貌を来している社会現象の前で,被災者住民の方々の苦悩は計り知れないものがある。
この放射能による住民・地域社会への甚大な汚染被害をもたらした原因は完全に人災であると断言できる。まさに東電の福島原発の破壊による事故であり,今後の原発の在り方を含め,国民全体で意思決定してゆかねばならない問題である。
特に注目すべきは日本の原発の立地として,いずれも海岸近くに設置されており,福島原発と同様な危険性を内在していることである。さらに福島原発の後処理として廃炉は決まっているものの,その具体的な施策や方向性がいまだに明確になっていないことである。かつてロシアのチェルノブイリやアメリカのスリーマイル島などの原発事故でも,三十数年経過した現在でも周辺住民が未だにふるさとへ帰れないという現状がある。放射能の拡散は一度発生すればその後処理には全く推し計ることができない年月と労力・費用が掛かるのである。
今稼働を停止している原発の再稼働問題も,今の政府は一部の専門家の判断に任せて,安全基準をクリアすれば自動的に再稼働を認めるという安易な原発政策しか保持していない。今回のような未曽有の原発事故の経験を踏まえて,日本のエネルギー政策について明確な将来への展望を持って,今の林立している原発をどうするのか,また,根本的なエネルギー政策を如何に再構築するかを敢然と決定すべきと思われる。因みに,ドイツではこれ以上の原発は作らないということを国是としている。
過去の太平洋戦争の中で唯一の被爆国である日本が,平和利用の目的であるとはいえ,今回の福島原発の事故のような放射能汚染災害を繰り返す危険性を何としても阻止しなければならない。エネルギー政策の一環として,今も太陽光や地熱発電なども開発され普及も進んでいるが,さらに比較的大気汚染の少ない天然ガス利用による火力発電の再増強も視野に入れて,安易に原発に頼らないあらゆる分野のエネルギー政策を模索し,国民的合意の下に,その施行を推進することが肝要である。 
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