有限会社 三九出版 - 初めての世界一周旅行記(その3・米国編)


















トップ  >  本物語  >  初めての世界一周旅行記(その3・米国編)
miniミニJIBUNSHI

☆超音波医学国際会議出席異聞(12)
            初めての世界一周旅行記(その3・米国編)

                    和賀井 敏夫(神奈川県川崎市)

 ○ボストン(マサチューセッツ州)
1969年6月23日,初めて大西洋を横断しボストン空港に到着した。米国は3度目の訪問だっただけに,欧州の重さと違う懐かしさを感じた。リリー博士をMIT(マサチューセッツ工科大学,人間機械研究所)に訪ねた。彼は当時,強力集束超音波研究領域で,イリノイ大学と我々と並ぶ世界の3大拠点の一つだった。彼と研究成果について話し合った後,彼の所属の研究所を案内してもらった。この研究所の目的は人間の機能を機械に応用することであり,自立歩行可能な大小の恐竜の如き機械の開発が,月面着陸やベトナム戦争用とのことには驚かされた。その後,13年前,船医のアルバイトで出席した国際音響学会の舞台となったMITのクレスギホールなどの古戦場を訪れ,チャールズ河畔を散策しながら,往時を思い起こし感無量だった(『本物語』38号)。
○バルチモア(メリーランド州)
 ジョーンズホプキンス大学の招待によりバルチモアを訪問したのだが,同時に同大学脳外科で活躍中の植松角雄博士との再会が大きな楽しみでもあった。彼は順天堂大学医学部脳外科時代,私の研究室で超音波診断の研究を実施,1963年米国に留学したので,6年ぶりの再会を心から楽しみにしていた。病院での彼との久しぶりの会合は感激の極みで,彼はこの病院でも脳外科で頑張っているのを知って心から嬉しかった。30名ほどの出席者を前にウィーン会議の報告を中心に話した。
 講演会後,病院に隣接する彼の官舎に案内された。多くの官舎が中央の芝生の広場を囲んで建てられ,この官舎群全体が高い塀で囲まれていた。聞くとバルチモアは黒人が多く,安全対策からのことだったのには,米国は自由平等の天国と思っていただけに,その恥部を見せられた思いだった。夕食にロブスターの店に案内された。出掛けに奥さんから「ストリップではないの」と笑って冷やかされた。バルチモアはロブスターとストリップで有名とのことを初めて知らされた。大きな伊勢エビを腹一杯食べたのは感激だった。
○シャンペイン(イリノイ州)
 7年前のイリノイ大学のアラトンハウスでのシンポジウム(『本物語』41号)以来のイリノイ大学の超音波グループとの再会だけに期待が高まっていた。イリノイ大学の超音波研究グループを前に,ウィーン会議の内容を報告すると同時に,強力集束超音波の実験結果についても話した。皆さんは特に癌組織破壊,治療の基礎的臨床的結果に大変興味を示し,長時間討論を行った。翌日,7年前の懐かしいアラトンハウスを再度案内してもらい,当時の感激に浸ったのだった。
○ビリングス(モンタナ州)
 ビリングス総合病院の招待により,初めてビリングス,モンタナを訪問した。高地にある空港に到着,責任者のフランキー医師が小学生の息子さんと一緒に出迎えてくれたのは嬉しかった。ホテルに案内された後,ビリングス総合病院を訪問,近代的な立派な病院だった。早速放射線科主催の30名ほどの出席の講演会が,フランキー先生の司会で行われ,結構質問も多く楽しかった。講演後,フランキー医師の自宅に招待された。広い敷地に豪華な家,庭には立派なプールもあり,羨ましい限りだった。
 翌日の7月4日は独立記念日で,夕刻からのピクニックの前に,私は午前中,フランキー先生の自家用機で空中散歩に案内されることになり,驚くやら興奮に包まれていた。フランキー先生と友人の医師と息子さんと私の4人で自家用のセスナ機に乗り込み,フランキー先生の操縦で軽々と離陸した。何しろ初めての経験だっただけに,興奮の連続だった。モンタナの緑の樹海の彼方に雪を頂くロッキーの山々や美しいダムの景観を楽しむなど,約1時間の空中散歩を楽しみ帰港した。
 夕刻,ご家族の皆さんと一緒にゴルフ場でのピクニックに参加した。ゴルフクラブの前の芝生の広場には多くのバーベキュウが準備され,芝生に座って料理を楽しんだり,アコーデオンに合わせて歌ったり踊ったり,皆さん素朴ながら心から独立記念日を楽しんでいた。夜が訪れ暗闇になると花火大会が始まった。花火は近くの山の崖の麓から打ち上げられた。一発が上がると,峩々たる山崖が照らし出され,西部劇に見られるような素晴らしい光景には,皆さんと一緒に歓声を挙げた。一発が終わり,元の暗闇になると,また打ち上げられるという昔ながらの余韻を残す花火大会だった。皆さんの話題は,旬日に迫った人類の初月面着陸のアポロ11号の件であり,その熱狂的な関心の高さには感心した。
 以上で今回初めての世界一周を終え帰国した。




投票数:48 平均点:10.00
前
犠牲になった人達とボランティア
カテゴリートップ
本物語
次
常 を 疑 え

ログイン


ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失