有限会社 三九出版 - 「竹の子医者」の日々  その13


















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                  「竹の子医者」の日々 その13

                           星 康夫(東京都世田谷区)

○手に入れたビールサーバー○……前号の末尾で書いた「ビールサーバー」の話の続きです。応募は6月初め。当然この夏のシーズンは,これでおいしくビールを飲めると思っていたのですが,製造が間に合わず発送が遅くなるとの連絡。折角シーズン初めからきめ細かい泡のビールが飲めると期待していたのに。毎日4缶ずつ飲むと約1ヶ月,ビールサーバーが到着する頃には,在庫も底をつきます。しょうがないから買い足しましょう,しょうがないからね。でもさ,人の期待を裏切ると,もうビールは飲まないぞ(否,そんなことは絶対無いけどね)。昨日は七夕,ちょっとシーズンは違うメロディーだけど,「早く来い来い,ビールサーバー」と心の中で口ずさみました。
 8月に入り数日後,やっとビールサーバーがご到着。当然応募に必要であるために止むを得ず(と言っておきましょう)購入した120缶は1ヶ月前に飲み尽くしました。
 さてそのサーバーですが,予想以上に大きく,缶ビールの缶をその都度入れ替える使用前・使用後の処理も結構面倒で,1回使用しただけで,そのまま部屋の片隅で休憩中ということになりました。1本、1本面倒な操作が必要なら,細かい泡のビールでなくてもよい,カチッとプルトップを開けて,グラスに注ぎ,飲む,それで十分です。もしも私と同じような気持ちで,今シーズンこのサーバーを手に入れた人がいましたら,ご感想を聞いてみたいと思います。
 ビールに関しては,最近もう1つの話題がありました。ビール会社と国税当局との間に考え方の違いがあり,「第3のビール」で発売中のものが,「発泡酒」ということになったと。この2つの「ビールもどき」のものでは税金が違うのだそうです。それにしても,こんなに税金がかかっているとは想定外でした。そうだ。私はビールを沢山飲み,税金を沢山納めている愛国者なのだ。
○勘違い○……8月のある暑い日に,足が痛いという患者さんが来ました。「2〜3ヶ月前に左の足首が痛くて,ここで診てもらいましたが,又痛くなったので来ました。治ってないのでしょうか。寒くなって更に痛くなると嫌だから」と。カルテを出して確認しました。昨年の10月に受診されていました。それも1度だけ。そして痛かったのも右の足首です。「昨年の10月に受診されています。ですからもう一冬経過し寒さも経験されていますよ。それに痛かったのは右の足首でしたよ」。「そうですか,昨年ですか。まあそれはそれでいいが,場所は絶対に左でした」と。昨年のレントゲンフィルムを出してきて見て頂き,昨年の秋の受診であること,部位は右であることをやっと了解して頂きました。このような勘違いはある程度止むを得ませんね。
 こんな話もあります。「1ヶ月前に初めて診てもらって,その後2〜3回来たがちっとも良くならない。どうしてだ」と。カルテを確認すると1ヶ月前に1度来院しただけで,その後は来院していない。「1度だけですヨネ。その後は治療に来てませんヨ」。「いや,その後2〜3回は来てる,絶対に」と。カルテを開いて日付を確認してもらっても,納得してもらえない。「そうですか,それではその2〜3日分の診療費は頂くのを当方が忘れているのでしょうか? いらしたのは何日ですか。未払い分を計算しますから」。しばらく沈黙が続いた後で,「イヤ,イヤ,勘違いかな。やっぱり1日だけだったような気がする」。さあ,では治療を始めましょう。
○診察の基本○……時々こんな質問を受けます,「医者は患者に触ったり,叩いたり,聴診器で聴いたりしているが,何が分るんだ。カッコだけじゃないのか」と。その通り触診,打診,聴診,更に視診もあります。どんな姿勢で歩いて来たか,どこが一番痛そうか,多くの情報が得られ,それだけで診断のつく場合も沢山あります。最近はCT,MRI,エコーの検査と画像診断が進歩しました。しかし,ヤクザの「飲む,打つ,買う」風に言えば,医者にとっては「視る,触る,叩く,聴く」は,これが先ず基本です。
 後輩で優秀かつユーモアのある医師が,学生の指導をしながら聴診器を手にして,こう聞きました。「君達は聴診器を使う時,どこが一番大切だと思うか?」と。学生諸君は「胸やお腹にあてる部分の膜が大事だと思います。最近は性能の良い膜が出来ていると聞いています」「その先端部分の膜から耳へと伝える役目をする管が大切だと思います」「管から耳へとつなぐ部分,耳に挿入する部分だと思います」と。色々の意見が出た後で,その指導医曰く「その耳,右と左の耳の間が一番大切なんだヨ」と。その通り一番大切なのは耳と耳との間に存在するもの「脳ミソ」なのです。即ち道具で得た情報を処理し,理解することが最も大事なのです。器械だけに頼らず総合診断のできる良い医師になってください。

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