《自由広場》
「竹の子医者」の日々 その12
星 康夫（東京都世田谷区）
○過保護をも治療○……私の診療所には，小学校に近いこともあり，怪我をして来る子供が大勢います。大抵は，母親がついて来ます。診療所では，まず予診票に記入してもらいますので，この子は膝を痛くして来院したのだな，とあらかじめわかっています。「今日はどうしたのかな」と子供に尋ねます。そうすると子供は何も答えずに，後ろに居る母親の顔を見上げます。母親が答えそうになった時に，「アレッ，何年生だい。自分で答えられるじゃないか」と，母親を制してそう言います。「ウーン，ウーン」と，何を言っていいのか悩んでいるようです。「どうしたの。いつから痛いの」と少しずつ話を始めます。「そうか。その時何をやってたの。部活か。それで部活は何をやってるの。 バスケットか。それで相手とぶつかって痛くしたのか。 わかった，わかった」。こんなふうに話しかけます。家庭の環境なのでしょうか，教育なのでしょうか，過保護なのでしょうか，最近こんな場面が多くなりました。私は子供の自立心を高めるために，又，親の過保護をたしなめるために，先に書いたように少し厳しい態度で臨みます。母親は時にイヤーな顔をします。子供はションボリします。でもそれで良いんです。その中から私とのコミュニケーションがとれてくれれば。そんなふうに思いながら毎日診療しています。
○検診での予期せぬハナシ○……今年も区民検診が始まりました。検査項目の中に，心電図もあります。この心電図の検査を拒否された方が居ます。理由は「心臓の電気を取られるのは絶対否だ。死ぬことはないでしょうが，心臓が弱ってしまうでしょう。お断りします」と。「心電図をとりましょう」という言い方がいけないのでしょうかね。「心電図を検査しましょう」と言えば良いのかな。ご納得して頂けないので，心電図の検査は中止としました。
○定時制高校での予期せぬハナシ○……定時制高校の検診にも従事しました。特に夜間部の生徒さんには50代の方もいらっしゃいます。若い女生徒が「エー胸を出すんですか，嫌らしいな」と言っていると，「先生すみませんね，こんなババーで」と，垂れ下がったおっぱいが目の前に。しかし，その向学心には私の頭が垂れ下がります。又，リストカットを繰り返す２人の女生徒がいました。校医として，校内で話しにくい事は診療所に来てもらって相談にのりました。現在１人は看護師を目指し，もう１人は福祉の仕事に就いています。これは私の鼻がちょっと高くなるお話です。
○“カレー臭”○……顔見知りのシェフ。小太りで，脳梗塞，心筋梗塞等で現在も治療中ですが，今日は腰が痛いと来院。と同時に狭い診療所内は，強烈なカレーの匂いにつつまれました。今日は休業日の前日なので，今までカレーの仕込みをして来たとのこと。来院の途上でも通りすがりの人達が，皆振り返っていたとのこと。時刻はお昼直前。お腹の空いた身には，とても好ましい匂いでした。しかし午後までこのままでは困る（ここは診療所でレストランではありません）。２台の空気清浄機をフル回転。午後3時の診療開始時間にはやっと診療所らしい空気に戻りました。――追記：これは“カレー臭”のお話です。最近話題の“加齢臭”（皮脂の酸化物の臭い）とは違います。
○胆石症の“増床”○…３Fから４Fへ，そして５Fへ。本誌「本物語」30号，32号で胆石症の３F，４Fというお話をしました。?Female（女性） ?Fatty（肥満） ?Forty（40歳台） ?Fair（健やか）ということで，私流の言い方で「中年，デブ，ヤッカマシイ，オバン」と記したのですが，最近，日本消化器学会が策定した「胆石症診療ガイドライン」では，コレステロール結石のリスクファクターとして，５Fが記載されております。この際ビル工事の増床の如く，５Fを追加しますと同時に?のF（Fair）について改造（―ではなくて，訂正）させて頂きます。５番目のFは（Fertile又はFecund）で（多産の）という意味です。４FのFairに関しては（白色人種）と訂正させてください。しかし，このままでは面白味がありませんよネ。これも私流に次のようにまとめてみました。「中年で，小太りで，色白で，子沢山の女性」と。それにしても増築は危険なので，このくらいで終わりとしましょう。そして，私は「男子に生まれて，良かったなあ」と思います。
○ビール大好き○…７月に入り，暑さも増し，ビールのおいしい季節となりました。ビルの屋上のビアホールも，大忙しのようです。私は大のビール好き，毎晩たらふく飲んでます。「休肝日」という文字は，私の辞書にも，頭の中にもありません。私の愛飲するビール会社が，シールを集めると全員にビールサーバーを，もれなくくれるとのことで，規定の枚数・120枚，つまり120本分を集めました。24缶入りで５カートンということになります。結構沢山の量です。「しょうがない。仕方がない」と言いながら頑張って飲んでます。（本心はニコニコしながら飲んでます。）
「竹の子医者」の日々 その12
星 康夫（東京都世田谷区）
○過保護をも治療○……私の診療所には，小学校に近いこともあり，怪我をして来る子供が大勢います。大抵は，母親がついて来ます。診療所では，まず予診票に記入してもらいますので，この子は膝を痛くして来院したのだな，とあらかじめわかっています。「今日はどうしたのかな」と子供に尋ねます。そうすると子供は何も答えずに，後ろに居る母親の顔を見上げます。母親が答えそうになった時に，「アレッ，何年生だい。自分で答えられるじゃないか」と，母親を制してそう言います。「ウーン，ウーン」と，何を言っていいのか悩んでいるようです。「どうしたの。いつから痛いの」と少しずつ話を始めます。「そうか。その時何をやってたの。部活か。それで部活は何をやってるの。 バスケットか。それで相手とぶつかって痛くしたのか。 わかった，わかった」。こんなふうに話しかけます。家庭の環境なのでしょうか，教育なのでしょうか，過保護なのでしょうか，最近こんな場面が多くなりました。私は子供の自立心を高めるために，又，親の過保護をたしなめるために，先に書いたように少し厳しい態度で臨みます。母親は時にイヤーな顔をします。子供はションボリします。でもそれで良いんです。その中から私とのコミュニケーションがとれてくれれば。そんなふうに思いながら毎日診療しています。
○検診での予期せぬハナシ○……今年も区民検診が始まりました。検査項目の中に，心電図もあります。この心電図の検査を拒否された方が居ます。理由は「心臓の電気を取られるのは絶対否だ。死ぬことはないでしょうが，心臓が弱ってしまうでしょう。お断りします」と。「心電図をとりましょう」という言い方がいけないのでしょうかね。「心電図を検査しましょう」と言えば良いのかな。ご納得して頂けないので，心電図の検査は中止としました。
○定時制高校での予期せぬハナシ○……定時制高校の検診にも従事しました。特に夜間部の生徒さんには50代の方もいらっしゃいます。若い女生徒が「エー胸を出すんですか，嫌らしいな」と言っていると，「先生すみませんね，こんなババーで」と，垂れ下がったおっぱいが目の前に。しかし，その向学心には私の頭が垂れ下がります。又，リストカットを繰り返す２人の女生徒がいました。校医として，校内で話しにくい事は診療所に来てもらって相談にのりました。現在１人は看護師を目指し，もう１人は福祉の仕事に就いています。これは私の鼻がちょっと高くなるお話です。
○“カレー臭”○……顔見知りのシェフ。小太りで，脳梗塞，心筋梗塞等で現在も治療中ですが，今日は腰が痛いと来院。と同時に狭い診療所内は，強烈なカレーの匂いにつつまれました。今日は休業日の前日なので，今までカレーの仕込みをして来たとのこと。来院の途上でも通りすがりの人達が，皆振り返っていたとのこと。時刻はお昼直前。お腹の空いた身には，とても好ましい匂いでした。しかし午後までこのままでは困る（ここは診療所でレストランではありません）。２台の空気清浄機をフル回転。午後3時の診療開始時間にはやっと診療所らしい空気に戻りました。――追記：これは“カレー臭”のお話です。最近話題の“加齢臭”（皮脂の酸化物の臭い）とは違います。
○胆石症の“増床”○…３Fから４Fへ，そして５Fへ。本誌「本物語」30号，32号で胆石症の３F，４Fというお話をしました。?Female（女性） ?Fatty（肥満） ?Forty（40歳台） ?Fair（健やか）ということで，私流の言い方で「中年，デブ，ヤッカマシイ，オバン」と記したのですが，最近，日本消化器学会が策定した「胆石症診療ガイドライン」では，コレステロール結石のリスクファクターとして，５Fが記載されております。この際ビル工事の増床の如く，５Fを追加しますと同時に?のF（Fair）について改造（―ではなくて，訂正）させて頂きます。５番目のFは（Fertile又はFecund）で（多産の）という意味です。４FのFairに関しては（白色人種）と訂正させてください。しかし，このままでは面白味がありませんよネ。これも私流に次のようにまとめてみました。「中年で，小太りで，色白で，子沢山の女性」と。それにしても増築は危険なので，このくらいで終わりとしましょう。そして，私は「男子に生まれて，良かったなあ」と思います。
○ビール大好き○…７月に入り，暑さも増し，ビールのおいしい季節となりました。ビルの屋上のビアホールも，大忙しのようです。私は大のビール好き，毎晩たらふく飲んでます。「休肝日」という文字は，私の辞書にも，頭の中にもありません。私の愛飲するビール会社が，シールを集めると全員にビールサーバーを，もれなくくれるとのことで，規定の枚数・120枚，つまり120本分を集めました。24缶入りで５カートンということになります。結構沢山の量です。「しょうがない。仕方がない」と言いながら頑張って飲んでます。（本心はニコニコしながら飲んでます。）
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 初 め て の 出 版 |
 本物語 |
 「似指」と「おだいじ」 |