有限会社 三九出版 - 東日本大震災の教え


















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☆東日本大震災☆           東日本大震災の教え

                           
                            鈴木 重範(静岡県清水町)

 未曾有の大災害は現在生活する人間社会に安全とは何かの問題を浮き彫りにした。3.11にあっては津波災害についてが大きな焦点になった。私の住む静岡県は殆ど海に接している。24年3月31日内閣府の有識者検討会が発表した「南海トラフの巨大地震モデル」は,想定地震M9.1設定の津波予想を発表した。これによると県内に起こる津波高は20m以上が来る可能性がある海岸が多数指摘された。 従前から静岡県は,昭和51年に発表された「東海地震説」に基づいた被害想定により,防災対策を続けてきた。また平成13年5月発表の東海地震M8程度について発表された,第3次地震被害想定に備えた防災訓練等々の対策を継続して実行している。毎年9月1日と12月1日が県内の市町村全域で防災訓練を実施し,行政,民間団体,町内会組織,各家庭参加である。東海地震に対する防災意識は37年間続けて高揚されてきていた。ところが,3.11東日本大震災が従来の防災意識を大きく変えることになったのである。先に述べた南海トラフの巨大地震モデル発表である。
 静岡県は今年6月に,東海・東南海・南海での巨大地震が発生する「最悪の想定」による「第4次被害想定」を作成した。今回の想定では津波被害が最重要課題として取り込まれている。そして各市町村は,この想定を基に避難対策について計画することになっている。今年は計画を作成する各々の段階的施策が始まったばかりである。
 また県内には御前崎にある中部電力浜岡原発が大きな問題となった。内閣府が設けた検討会が,最大21mの津波高を示したのだ。福島第一原発の事故直後の緊急安全対策とした18mの防波壁の工事は福島第一原発の敷地を駆け上がったとされる15mの津波を考慮しての高さであった。それが想定により見直しを求められたのだ。現在は21mに嵩上げ工事を進行している。しかし,この浜岡原発の立地場所は東海地震説の発端となるプレート境界で発生する巨大地震のプレート上近くに位置していることである。津波対策のみが強調されて問題視されていることに疑念を感じているのは私だけであろうか。静岡県民,いや日本国民が真剣に議論する必要なことであろう。
 以上の如く,3.11の大災害は静岡県に於いては火急な問題を提示している。
 ここで私的な防災に関する出来事を述べてみたい。平成15年,ちょうど60歳・還暦に到達し銀行員生活から解放され,そこで「自分自身が自発的に,楽しく,快適に,そして親切な行動ができる自証的(?)な活動をしたい」と決意した。それにはボランティアをしたい。しかし一人個人で行動を起こすのには年齢的,体力的に自信が持てない。そこで県広報誌などから,ボランティア行動が出来る講座や講習会を調べてみた。各種の講座等があった中から選び出したのが「災害ボランティアコーディネーター(以下「災害VC」)」であった。東海地震に備えて,静岡県は10年程前よりこの災害VC養成に力を注いでいた。大規模災害の発生時には各々の市町村は災害対策本部を設置するが,防災ボランティア本部設置は出来ず,社会福祉協議会(以下「社協」)などに依託する方法しか選択余地がない状況下にある。しかし各々の社協には人員に制限があり,災害時には多くのボランティアが必要不可欠である。現在災害地には多数のボランティアが参集してくるが,このボランティアの皆さんを被災者ニーズに適応した仕事へと適宜に割り振りするのが災害VCの役割である。私は8年前に静岡県災害VCの資格を得て,災害VC清水町連絡会を平成19年に設立した。現在会員は28名,毎月1回は防災に関係した訓練をして,大災害に備えている。
 静岡県では毎年3月に県内外の災害VCによる「救援活動のための図上訓練」を実施している。この場には県内各市町村の災害VCと全国からボランティア団体の多数が参集している。「ワークショップ型図上訓練」として,互いに協力し合いながら活動するための広域支援の仕組みを絆として,ネットワークを構築する会でもある。3.11で活動している団体メンバーも多数参加しており,感動する場も多くある。その中で実感していることは,被災地の復興は物心ともに長期間の施策が必要であるということであり,被災された人達の心身の疲労を少しでも癒すことが出来るのはボランティアが被災地で活動し,そして人々との関わりをもつことであるということである。
 ボランティアの活動は一人一人の行動が繋がり大きな輪になり,大きな活動になる。願わくば為政者がこの活動にもとっと関心を寄せてほしいものである。私自身も体力に自信を持つ限りこの災害VCメンバーとして頑張るべく,防災の勉強をしているところである。それは,3.11で犠牲になられた方々の無念を思い続け,被災された人々の一日も早い復旧・復興を願う気持ちの表れでもあると思っている。3.11で再確認した「安に居て危なさを思う」を脳裏に刻み,日々の生活を送るよう心がけている。





 
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