還暦盛春駆ける夢 めげない凡人
原田 健作(神奈川県秦野市)
会社員時代に,たまたま山歩きの本(エッセイ)を上梓する機会に恵まれ,また同じ頃,読んだ本に「人生二毛作、第二の人生は、これまでの人生と全く違った生き方をしてみよう」と書いてあったのを真に受け,定年後は臆面もなく作家の道を志すことにした。子供たちが巣立ち,夫婦二人だけの所帯になっていたから,妻もあきれ顔で見ているだけで特に反対はしなかった。そんな訳で,私の一日は朝8時にリュックを背負って図書館に向かうところから始まる。私の通学路ならぬ『通館路』は家から7キロ余りの道のりだ。決して悪路ではないが,前半は階段と傾斜の続く道で,後半になって,やっと河川敷のなだらかな遊歩道となる。万歩計で約1万歩,所要時間は1時間半である。作家には,おいそれとなれるまい,相当の覚悟が必要だ。ならば往復歩くことを自分に課してみよう。それくらい負荷を掛けた方が自分を鍛えるには,いいだろうと思ったら,すんなりと図書館通いがスタート出来た。真夏の熱中症になりそうな時期から歩いているので,鼻が痛くて涙が出そうになる真冬の寒さに耐えられるし,寒い時季を歩き通して夏を迎えるからカンカン照りにも体が音を上げないのだろう。会社員時代に比べて食欲は間違いなく3割位増加したのに体重は4キロ減った。現在身長は178センチで,体重は65キロだから,大食らいの割に痩せている方に入るだろう。健康診断で悪いところは“頭”を除いて,今のところない。
私の読書の仕方は,会社員時代,アトランダムに本を選んで,読んだら終わりの読みっ放しだったが,定年後は書きもののネタ探しをするために,もう少し丁寧に読むことにして,文学(小説,エッセイ)は読んだ後,感想文を書き,文学以外のものはノートを取りながら読むようにしている。読後ノートは大学ノートを使っているが,いつの間にか37冊目に入った。図書館には週6日行き,朝9時半頃から夕方5時頃まで読み書きして過ごし,それから家に帰ると,もう7時前になっているので余り待たされないで夕飯が出てくるのが嬉しい。しかし現実は甘くはない。図書館通いが日課になってから,かれこれ6年になるのだ。この間,出版社の募集する文学賞,新人賞などに小説2編,作文4編,応募したが,どれもこれも落選だった。自分の小遣いくらいは自分で稼ぎ,年金は手つかずのまま妻に渡す目論見は,未だ成就せず,毎月妻から小遣いをもらう境遇に甘んじている。辛いのは小説の落選ではなく,わずか原稿用紙3〜5枚程度の作文でも入選出来ないことだ。落選する度に自尊心は傷つく。作家への道は見果てぬ夢かと思うこともある。めげないでおれるのは多分,要所,要所でガス抜きが出来ているからに違いない。落選する度に図書館で読書するだけでなく少し道草をしてみようという思いが強くなった。 作家への道は当初考えていたより,更に長期戦を覚悟しなければならないと悟ったのだ。 カラオケ, 低山ハイク・ツアー,英会話など,いろいろなことをやってみたが結局,英会話を習うことに落ち着いた。英会話のサークルに入って,英会話を勉強しながら多くの人に接するのが社会性を失わず,老化防止にもなるし,執筆活動にもプラスの効果を生むだろうと考えた。都合のいいことには,レッスン会場は図書館の隣のビルであった。しかし,「下手な考え,休むに似たり」,いざ,始めてみるとヒヤリングは会話のスピードについて行けないし、大概の英単語・熟語はすっかり忘れ,もう一度,暗記しようと思っても六十の手習いは容易に覚えられない。脳が拒絶反応を起こすのか,一晩寝るとせっかく覚えたことが綺麗にリセットされている。英語にも悪戦苦闘しているが,辞めようと思ったことは一度もない。一緒に学ぶ仲間がいて,叱咤激励してくれるからである。今ではすっかりクラスメート(女性ばかり)の中に溶け込んで,週一回のレッスンを心待ちにしている。そればかりかサークルが企画した英語劇,英語の歌,ミュージカル仕立てのダンスとか,とにかく,いろいろのことをやらされ、目を白黒させながら付いていっている。他の地区の英会話サークルとも接点が出来,催し物に招待したり,されたりする間柄になった。勉強にもなるし,刺激も受ける。これらの経験が全て執筆活動の肥しになると信じて積極的にかかわっていくことにしている。妻とは夫婦共通の趣味である登山やハイキングに時々行くが,これは楽しいし,執筆に行き詰まった時の気分転換効果が大きいのだ。執筆に行き詰まるのは小説を書いている時だけで,エッセイ(紀行文)で行き詰まることはない。綺麗な景色を見るとエッセイの創作意欲は,ドンドン高まっていく。たとえ結果はどうなろうとも,体力と気力が続く限り,少しずつ小説もエッセイも書き続け,今後も文学賞,新人賞に挑戦していこう。情報を発信し,自分が発信した文章によって人に影響を与えたいと強く思う。
――めげない凡人は強いのだ,失うものがないから――
原田 健作(神奈川県秦野市)
会社員時代に,たまたま山歩きの本(エッセイ)を上梓する機会に恵まれ,また同じ頃,読んだ本に「人生二毛作、第二の人生は、これまでの人生と全く違った生き方をしてみよう」と書いてあったのを真に受け,定年後は臆面もなく作家の道を志すことにした。子供たちが巣立ち,夫婦二人だけの所帯になっていたから,妻もあきれ顔で見ているだけで特に反対はしなかった。そんな訳で,私の一日は朝8時にリュックを背負って図書館に向かうところから始まる。私の通学路ならぬ『通館路』は家から7キロ余りの道のりだ。決して悪路ではないが,前半は階段と傾斜の続く道で,後半になって,やっと河川敷のなだらかな遊歩道となる。万歩計で約1万歩,所要時間は1時間半である。作家には,おいそれとなれるまい,相当の覚悟が必要だ。ならば往復歩くことを自分に課してみよう。それくらい負荷を掛けた方が自分を鍛えるには,いいだろうと思ったら,すんなりと図書館通いがスタート出来た。真夏の熱中症になりそうな時期から歩いているので,鼻が痛くて涙が出そうになる真冬の寒さに耐えられるし,寒い時季を歩き通して夏を迎えるからカンカン照りにも体が音を上げないのだろう。会社員時代に比べて食欲は間違いなく3割位増加したのに体重は4キロ減った。現在身長は178センチで,体重は65キロだから,大食らいの割に痩せている方に入るだろう。健康診断で悪いところは“頭”を除いて,今のところない。
私の読書の仕方は,会社員時代,アトランダムに本を選んで,読んだら終わりの読みっ放しだったが,定年後は書きもののネタ探しをするために,もう少し丁寧に読むことにして,文学(小説,エッセイ)は読んだ後,感想文を書き,文学以外のものはノートを取りながら読むようにしている。読後ノートは大学ノートを使っているが,いつの間にか37冊目に入った。図書館には週6日行き,朝9時半頃から夕方5時頃まで読み書きして過ごし,それから家に帰ると,もう7時前になっているので余り待たされないで夕飯が出てくるのが嬉しい。しかし現実は甘くはない。図書館通いが日課になってから,かれこれ6年になるのだ。この間,出版社の募集する文学賞,新人賞などに小説2編,作文4編,応募したが,どれもこれも落選だった。自分の小遣いくらいは自分で稼ぎ,年金は手つかずのまま妻に渡す目論見は,未だ成就せず,毎月妻から小遣いをもらう境遇に甘んじている。辛いのは小説の落選ではなく,わずか原稿用紙3〜5枚程度の作文でも入選出来ないことだ。落選する度に自尊心は傷つく。作家への道は見果てぬ夢かと思うこともある。めげないでおれるのは多分,要所,要所でガス抜きが出来ているからに違いない。落選する度に図書館で読書するだけでなく少し道草をしてみようという思いが強くなった。 作家への道は当初考えていたより,更に長期戦を覚悟しなければならないと悟ったのだ。 カラオケ, 低山ハイク・ツアー,英会話など,いろいろなことをやってみたが結局,英会話を習うことに落ち着いた。英会話のサークルに入って,英会話を勉強しながら多くの人に接するのが社会性を失わず,老化防止にもなるし,執筆活動にもプラスの効果を生むだろうと考えた。都合のいいことには,レッスン会場は図書館の隣のビルであった。しかし,「下手な考え,休むに似たり」,いざ,始めてみるとヒヤリングは会話のスピードについて行けないし、大概の英単語・熟語はすっかり忘れ,もう一度,暗記しようと思っても六十の手習いは容易に覚えられない。脳が拒絶反応を起こすのか,一晩寝るとせっかく覚えたことが綺麗にリセットされている。英語にも悪戦苦闘しているが,辞めようと思ったことは一度もない。一緒に学ぶ仲間がいて,叱咤激励してくれるからである。今ではすっかりクラスメート(女性ばかり)の中に溶け込んで,週一回のレッスンを心待ちにしている。そればかりかサークルが企画した英語劇,英語の歌,ミュージカル仕立てのダンスとか,とにかく,いろいろのことをやらされ、目を白黒させながら付いていっている。他の地区の英会話サークルとも接点が出来,催し物に招待したり,されたりする間柄になった。勉強にもなるし,刺激も受ける。これらの経験が全て執筆活動の肥しになると信じて積極的にかかわっていくことにしている。妻とは夫婦共通の趣味である登山やハイキングに時々行くが,これは楽しいし,執筆に行き詰まった時の気分転換効果が大きいのだ。執筆に行き詰まるのは小説を書いている時だけで,エッセイ(紀行文)で行き詰まることはない。綺麗な景色を見るとエッセイの創作意欲は,ドンドン高まっていく。たとえ結果はどうなろうとも,体力と気力が続く限り,少しずつ小説もエッセイも書き続け,今後も文学賞,新人賞に挑戦していこう。情報を発信し,自分が発信した文章によって人に影響を与えたいと強く思う。
――めげない凡人は強いのだ,失うものがないから――
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