クリスマス・レクチャー
橋本 克紘(神奈川県大和市)
一挙に年取った訳ではない。乳幼児,児童,生徒,学生そしてサラリーマンの各段階をちゃんと踏んで来た。本当の汗も冷や汗も掻いて夢中でもがいているうちに何時の間にか遂に69回目の誕生日を迎えた。身近が祝ってくれたが顔で笑って心で泣いた。まだまだ学ぶことが多いのにこんなに年老いてしまったからである。
英国の王立研究所は,1799年,新知識の普及,有用な機械的発明改良の紹介そして科学の一般生活への適用を目的に,ヘンリー・キャベンデッシュ初代所長,ジョージ・フィンチ伯爵はじめ時代の代表的な英国の科学者によって設立された。設立の基金と提案は貧者の生活向上協会によってなされ,翌年,英国王室の勅許が授けられた。
王立研究所のノーベル賞受賞者は,1904年のジョン・ウイリアム・ストゥラットの物理学賞受賞から,2012年に山中伸弥教授と一緒に医学生理学賞を受賞したサー・ジョン・ガードンまで物理学,化学,医学,医学生理学の部門で15名に達している。
さて,英国の天才的な科学者,マイケル・ファラデー(1791〜1867)をご存知の読者諸賢が多いに違いない。彼は生活保護を受けるような鍛冶屋に生まれ早くから家業を手伝った。その後,13歳の時から製本屋の小僧になったが,理解ある製本屋の主人はマイケル・ファラデーが仕事の合間に製本仕掛けの本を読むことや屋根裏部屋で科学の実験をすること,同好の友と科学を論じることを黙認した。そんな時期,1812年当時英国第一の化学者,ハンフリー・デイヴィーの公開講演を王立研究所に聴きに行ったのが機会となって王立研究所の助手となり,1825年所長に就任した。その後電磁誘導現象や電気分解の法則の発見などの偉大な業績を挙げた。
マイケル・ファラデーの輝かしい自然科学上の業績に学ぶのは当然であるが,彼によって始められたクリスマス・レクチャーにも注目したい。毎年,クリスマスシーズンに著名な科学者を招いて王立研究所で開催されるクリスマス・レクチャーは,若い聴衆向きのスタイルで王侯貴族から一般市民の子弟まで8歳から80歳以上の年齢層を対象に続けられている。マイケル・ファラデー自身も有名な「ロウソクの科学」はじめ18回に及び講演を担当しているが,1825年から2012年まで第二次世界大戦の4年間を除き183回の講演会が重ねられている。
前述のように,2012年のノーベル医学生理学賞は山中伸弥教授が王立研究所のサー・ジョン・ガードンと共に受賞した。日本にもノーベル賞級の著名な科学者が増えてきている。彼らはじめ内外の優れた自然科学者や社会科学者方を招請し,若い聴衆向きのスタイルで誰でも聴講でき,英国のクリスマス・レクチャーに匹敵する,否それ以上の講演会を日本に創りたいものである。
東芝の社長,特別顧問を歴任された佐波正一氏は,訳本,「電気事始め・マイケル・ファラデーの生涯」を教文館から出されている。御年91歳のときのお仕事である。
また,米国の詩人サミュエル・ウルマンの詩「青春」にも励まされる。一部を記す。
「青春とは人生の或る期間を言うのではなく,たくましい意志,豊かな想像力,炎える情熱を指す。……臆病さを退ける勇気,安きにつく気持を振り捨てる冒険心を意味する。……』――作山宗久訳『青春とは,心の若さである』角川文庫10057
橋本 克紘(神奈川県大和市)
一挙に年取った訳ではない。乳幼児,児童,生徒,学生そしてサラリーマンの各段階をちゃんと踏んで来た。本当の汗も冷や汗も掻いて夢中でもがいているうちに何時の間にか遂に69回目の誕生日を迎えた。身近が祝ってくれたが顔で笑って心で泣いた。まだまだ学ぶことが多いのにこんなに年老いてしまったからである。
英国の王立研究所は,1799年,新知識の普及,有用な機械的発明改良の紹介そして科学の一般生活への適用を目的に,ヘンリー・キャベンデッシュ初代所長,ジョージ・フィンチ伯爵はじめ時代の代表的な英国の科学者によって設立された。設立の基金と提案は貧者の生活向上協会によってなされ,翌年,英国王室の勅許が授けられた。
王立研究所のノーベル賞受賞者は,1904年のジョン・ウイリアム・ストゥラットの物理学賞受賞から,2012年に山中伸弥教授と一緒に医学生理学賞を受賞したサー・ジョン・ガードンまで物理学,化学,医学,医学生理学の部門で15名に達している。
さて,英国の天才的な科学者,マイケル・ファラデー(1791〜1867)をご存知の読者諸賢が多いに違いない。彼は生活保護を受けるような鍛冶屋に生まれ早くから家業を手伝った。その後,13歳の時から製本屋の小僧になったが,理解ある製本屋の主人はマイケル・ファラデーが仕事の合間に製本仕掛けの本を読むことや屋根裏部屋で科学の実験をすること,同好の友と科学を論じることを黙認した。そんな時期,1812年当時英国第一の化学者,ハンフリー・デイヴィーの公開講演を王立研究所に聴きに行ったのが機会となって王立研究所の助手となり,1825年所長に就任した。その後電磁誘導現象や電気分解の法則の発見などの偉大な業績を挙げた。
マイケル・ファラデーの輝かしい自然科学上の業績に学ぶのは当然であるが,彼によって始められたクリスマス・レクチャーにも注目したい。毎年,クリスマスシーズンに著名な科学者を招いて王立研究所で開催されるクリスマス・レクチャーは,若い聴衆向きのスタイルで王侯貴族から一般市民の子弟まで8歳から80歳以上の年齢層を対象に続けられている。マイケル・ファラデー自身も有名な「ロウソクの科学」はじめ18回に及び講演を担当しているが,1825年から2012年まで第二次世界大戦の4年間を除き183回の講演会が重ねられている。
前述のように,2012年のノーベル医学生理学賞は山中伸弥教授が王立研究所のサー・ジョン・ガードンと共に受賞した。日本にもノーベル賞級の著名な科学者が増えてきている。彼らはじめ内外の優れた自然科学者や社会科学者方を招請し,若い聴衆向きのスタイルで誰でも聴講でき,英国のクリスマス・レクチャーに匹敵する,否それ以上の講演会を日本に創りたいものである。
東芝の社長,特別顧問を歴任された佐波正一氏は,訳本,「電気事始め・マイケル・ファラデーの生涯」を教文館から出されている。御年91歳のときのお仕事である。
また,米国の詩人サミュエル・ウルマンの詩「青春」にも励まされる。一部を記す。
「青春とは人生の或る期間を言うのではなく,たくましい意志,豊かな想像力,炎える情熱を指す。……臆病さを退ける勇気,安きにつく気持を振り捨てる冒険心を意味する。……』――作山宗久訳『青春とは,心の若さである』角川文庫10057
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