有限会社 三九出版 - 組 織 の 幹 事 役


















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                 組 織 の 幹 事 役

                           横舘 久宣(千葉県八千代市)

 現役のころは,確たる信念とまでは言えなかったかもしれないが,一種使命感を感じていたと思う。経営者団体の事務局に勤務し,労働問題や経営管理の視点から様々な課題について会議を企画・主宰し,発言し,啓蒙活動をし,それらが企業経営の向上や心地よい職場の実現に資するよう多分に意識していたと思う。フル・タイムの勤め人を退役し,自分の時間を百パーセント支配できる身分になったいま,そのような意識は薄れ,“自分の生活が第一”になった。居住地域の季節のイヴェントの実行委員会の一人としてお手伝いをしているが,その動機は,ここに長年住んでいるのだから頼まれたら辞退せず何らかのお役に立たねばという非積極的な思いからのものである。これでいいのだろうか。
 労働問題に主たる関心を持つジャーナリストの組織の幹事の一人として数年間務めを果たしたことがある。国際交流担当として海外視察団の企画と幹事役をこなし,同時に会報担当として毎号の企画・編集に携わり,けっこう時間と労力を使い,やや疲れ,任期を全うしたときはほっとした。ところがあまり時を経ずに,ふたたび幹事就任の要請がきた。今度は幹事グループのまとめ役をとのことだった。この歳になってそれは重い。しかし辞退しそびれ,受けることにした。「最短の1期2年しっかり務めた後,後任にリレーする」と妻にとりなしても彼女は大いに不満の様子だった。私は,この組織の存在意義を認めている。なくしてはいけないし,発展させる必要があると思っている。労働分野をきちんとフォローするジャーナリストがいなくてはいけない。働く者の幸せを大切に思い,職場や労働の実態をウォッチする人がいなければならない。そのためにはこの組織の確かな存在が必要だと思うのである。課された使命は軽くない。自分に課せられた幹事としての役目は大切だと思うことにした。
 このような思いから,もう一つの考えが浮かんだ。もの書きの集団の世話をしながら自らもいっそう何かを記し,発言する。意識して自らの考えを子や孫,友人,関係者など外に向け,適宜発信すべきではないかということだ。熟年としては,退役後の安寧の時間はかけがえのないものであり是非欲しい。そのうえで自分が生きてきた世界の進歩のために何かを成す。後進世代に向け時宜を捉えては何らかのメッセージを発することかなと思う。



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