有限会社 三九出版 - 《自由広場》    竹の子医者」の日々その6


















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《自由広場》

                   「竹の子医者」の日々その6
                           星 康夫(東京都世田谷区)

 ○予防注射はお問い合わせから○……インフルエンザの流行期に入り,ワクチンの接種の時期となりました。今年からは小児の接種量が変更となり,又昨年と違い季節型と新型とを一つにまとめて接種するようになりました。65歳以上の方は,各々の自治体から補助金が出ますので一律に割安の料金です。それ以外の年齢の方の接種料金は決まっていないのをご存知でしたか。保険診療ではなく自費診療ですので,診療所や病院によって料金が各々違います。何故医師会等で一律にしないかと聞かれる事があります。公正取引委員会という組織があり独占禁止法で談合は禁じられているのです。施設により3,000円から8,000円と大きな違いがあります。もし接種しようとお考えでしたら,電話で問い合わせてから受けては如何でしょうか。又,高齢者への肺炎球菌ワクチンもテレビ等での放送もあり,今年は話題になっています。これは5年に1度の接種で,補助金を出している自治体も多いようです。希望者が多く,年末・年始はワクチンの不足が生じているようです。
○幼子たち○……今日は幼稚園の検診に行って来ました。園児は2歳から年長さんまで計14名の小さな小さな幼稚園です。因みに昨年は5名でした。職員は園長先生と保母さん2人。園長先生は,元は筑波の研究所に勤務された科学者であり,前園長であった奥様が亡くなられた後に,園長として戻られた方で,学問にも児童にも,厳しくかつ優しい方です。「コンニチワ。今日は皆さんが元気かどうか,病気はないか,を検査します。痛くないから大丈夫だよ」。一人一人,私の前に名前を言ってから並びました。そしてその時には緊張した顔つきも,検診の終了と同時にホッとした顔に戻りました。「ハイ,今日はこれで終りです。バイバイ」と言うと,反撃がきました。「バイバイはいけないんだヨ。サヨウナラでしょう」と。「分かりました,バイバイでなくサヨウナラですね。では皆さんサヨウナラ」と言い直しました。「サヨウナラ,アリガトウゴザイマシタ」と〈24の瞳〉ではなく〈28の瞳〉に見送られて帰ってきました。「みんな,元気デネ」。
○散髪もまた楽し○……「敬老の日」散髪に行って来ました。予約票を見ると,前回は4ヶ月前ですので,年に3回の割合です。実に安上がりな頭です。そして予約票には10回来店で500円offと。しかし私にとっては3年以上かかる事になります。店主に聞くと1年以内を考えていますと。更に嬉しい事には60歳以上は500円offと。敬老精神に富んだお店です。せめて,年に4回に増やそうかな。
○55年ぶりの電話○……「01…」の市外番号の電話がかかってきました。「北海道から? 何だろう?」と思いながら受話器を取りました。「仙台の中学校で同級だったKですが」と。懐かしい55年振りの友人からの電話でした。私の父と彼の父親とが大学での同期生だった事もあり,中学時代は大変仲良しでした。現在は秋田県で大きな医院を奥様や御子息と一緒に経営し,地域医療に貢献しています。色々と懐かしい思い出話の後で,今度の震災では警察医として岩手県の大槌にお手伝いに行って来たとの事でした。医療班としてではなく,警察医としての出務は病気や外傷の治療ではなく,主として死体の検案です。大変な惨状を目の当たりにした事でしょう。100体をも超える損傷の激しい御遺体を前にして,「この方達の生前の生活を思い,又今のこの方達の無念さを思うと,言葉がなかった。人生観が変わったよ」と。近日中に上京するとの事なので,ゆっくりと話を聞いてみたい。そしてお互いに70歳を越したのだから,ゆっくりと悔いのない人生を過ごそうと話したい。
○負けるな,福島○……今日は冬至です。ゆず湯に入りながら数日前のニュースを思い出しました。北限の「ゆず」として知られる福島県信夫山の「ゆず」が放射能の検査により出荷自粛との事。名物の「ゆず味噌」も食べられません。この夏は福島県伊達市のおいしい桃を皆様にお送りしようと思いました。しかし「折角お送りしても,食べて頂けないのではないか」とストップがかかりました。確かにその通りで,他の産地からお送りしました。今お米の出荷の時季となりましたが,これも出荷規制との事。自然の茸も同じでした。アンポ柿も今年は食べられません。大丈夫といわれるものも沢山あります。私と同年代の方達からは「大丈夫だよ。食べるよ。応援しようよ。発注してよ」との声がかかります。でも「孫達に食べさせるのは止そうか」との声も小さいが聞こえてきます。
 その通りです。これは当たり前のことです。これだけ曖昧な情報の中では「それは科学的でない。おかしい」とは少なくとも私は言い出せません。今地元では樹皮を剥ぎ取る作業をして除染に懸命です。「負けるな。来年のおいしい桃を待ってます」
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