有限会社 三九出版 - 《自由広場》  『50円で買う健康』―古希を迎えてボクシングにはまった!


















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――《自由広場》――

        『50円で買う健康』
           古希を迎えてボクシングにはまった!

          福永 邦明(東京都目黒区)

 昨年5月,「本物語」25号で,私の母95歳元気の源が“歩く・走る”であったと書かせて頂いた。無言の教えを受けた母への感謝の気持ちを込めて今は在宅介護の日々。
 母同様,65歳まで大の運動嫌いを自負(?)していた。振り返れば高校時代・体育の時間は教師の目を盗んでは怠けどおし。特に2週に1度ある5キロのマラソンでは最後尾を走り,通行中の軽トラ等の運転手に体謁が芳しくないからと頼みちゃっかり乗せてもらいショートカットしていた有様。大学時代は部活の吹奏楽とビッグバンドに熱中していたことを理由に,たまたま音楽好きの体育教師を口説き落として講義と2回の実技(3泊4日のワンダーフォーゲル参加)のみで優をもらって友人に自慢。社会人になっても映画会社の宣伝部勤務,社内でも時間的に最もハードなセクションであったこともあり(当時の同じ世代の大半は働くことに生甲斐を感じてただ我武者羅に突っ走っていたと思う),私もご他聞に漏れずよく働き,よく酒も飲んだ。
 30歳を過ぎて子供が誕生,育児や教育等家庭のことは全て妻に任せっきりで,過2度多いときで3度は午前様という時代が50代半ばまで続いた。(出産・育児休暇を2週間もとった文京区の区長に代表される30〜40代のマイホーム主義パパには理解出来ないと思うが。)
 そんなサラリーマン生活に終止符を打ち,62歳で定年退職。よせばいいのに妻の反対を押し切って映画制作に手を出して失敗。退職金全額を無にし多額の負債を背負って4年強,地獄を彷埋った。眠れない毎日が続き,神経科の医者から処方された精神安定剤と眠剤に依存する日々を過ごした。てな訳で体力づくりはおろか,運動とは全くといってよいほど縁のない人生を送ってきたのだ。
人生で初めて味わうどん底の私を立ち直らせてくれたのは,母の無言の教え“歩け・走れ”だった。金はいらない気力だけでよいのだ。実行に移して10日後には大分楽になり,眠剤に頼らずに眠れるようになった。いざ始めるととことん追求してしまうのは母のDNAかもしれない。少々の雨でもほぼ毎日,早朝6時には家を出発,短くて40〜50分,長くは3時間も歩くことがあった。勿論予め目的地を決め頭に叩き込んだ地図と時計で時間を睨めながら,まだ睡眠中の妻には行き先を告げずに出かける。目黒区・港区・品川区・大田区・世田谷区・渋谷区・新宿区・千代田区等都内地図上の線色で標された公園,河川,神社,寺を片っ端から選択した。妻から靴底が磨り減るからいい加減にしてくれと言われる。結婚当初から,飛び出したら何時戻るのか分からない鉄砲玉のような私の性格に不安と苦言を呈する身に凍みる一言だった。
 半年程経ったある日,近所の旧友から自宅の近くにある目黒区民センター内にトレーニングジムがあるのを知らされ,見学にいった。ランニングマシーン・各種の筋トレマシーンとストレッチ,エアロビックス,バランスボール,ヨガなど多数のトレーニング教室を実施していた。毎日9時〜22時,年中無休,区の施設(運営はミズノスポーツ)としては信じ難い条件の整ったもの。しかも65歳以上の使用料は100円,一月の定期利用者は800円と驚異の安さだ。(私の1回分は50円)
 生まれつき熟し易く,冷え易い体質なので,気温の急激な変化に体温調節が出来ず,冷え出すと体がガチガチに固まってあちこちの関節が痛んだ。若い頃から夏でも股引かパッチを穿き皆の笑い者になっていた程だ。最近は年のせいもあってそれが一層痛みを増していた。ジムのトレーナーの薦めでヨガストレッチを始めて2年,その効果があって悩んでいた腰痛が大分楽になっただけではなく,体が相当柔らかくなった。今は過4回のストレッチとヨガ,ボクシング,筋トレに励んでいる。自分でも驚くほどスリムに(約10キロ滅)なり,筋力も付いた。悦ぶべきは,ドライバーの飛距離では息子に勝り,パンチカはほぼ対等なのだ。昨年末ジムで実施した「体成分析測定」では,体重64kg・身長169�・体脂肪15%弱・筋肉量50.4%・体指数22.4kgと70歳の平均値を上回り,スタッフから理想的な体型と太鼓判を押された。
 社会人になってからの大半を冷えや胃痛で悩まされ,医者からは自律神経失調症と診断されて薬漬けだった当時に比べ,自分でも信じられない程健康である。病気知らず,医者要らず.薬要らずの過4回のジム通いはむしろ快感すら覚える。
 食・ストレス・運動不足による「血液炎症(汚れ)」で自律神経障害が生ずることが,あらゆる病気の初期原因となることが医学とスポーツ学の専門家が指摘している。私の経験から,読者の皆さんに最低でも毎日欠かさず歩く,出来れば適度な有酸素運動と下半身の筋トレを薦める次第である。
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