「本物語」が取り持つ縁で川柳を知る
田中 富榮(徳島県徳島市)
友達のTさんが「本物語」をご紹介してくださった。早速パソコンで検索すると全国から投稿されたエッセイ集が載っている。私は毎日3〜4人ずつの文章を拝読し,その書かれている内容のすばらしさに目を見張ったのである。どの人の文章もみんなレベルの高いものばかりで,何とすばらしい本なんだろうと読むほどに私の心はグイグイ本の中に引き込まれていった。すべて読み終えても,もう一度読みたいという気持ちになり繰り返し読んだ。その中で「二つの川柳」という短い文だけれどお寺の句碑の「何事もなかったような顔で寝る」が著者の目に止まり,なくなられたお兄さんと重なって,生前の「兄」を偲んだしみじみとした温かい著者の心情が読み取れて心に残り,「読みたい!」と私を捉えて放さなかった。また著者ご自身の「余生一年夕焼けが美しい」も格調の高い句で人生の重みが伝わってくる。いい文章は糸を引いたようにいつまでも余韻が残る。時々「二つの川柳」に会いたくなるとパソコンをそっと開いて恋人にでも出会うような気持ちで私は読んだ。なぜこんなに心が惹かれるのか自分でもわからなかった。
何回も読み返しているうちに「川柳ってこんなに味のある奥深いものだったのか!私も川柳を作ってみたいなあ」と,堰を切ったように熱い思いが胸いっぱいに広がり,川柳を勉強したい気持ちを抑えきれなくなったのである。それで先ず川柳の本を読んでみようと思い,「番傘川柳」という本を買ってきた。俳句は自然を詠むが川柳は人を詠む。世相をみつめ人間感情のすべてを十七文字で表現する楽しい文芸であると書いてある。人間を詠むというところが気に入った。ある日何気なく読んだ「本物語」の「二つの川柳」にふと心が動かされ,じっとしていられない感動が湧いてこようとは「縁」てふしぎなものだなあと思う。私は75歳のこの齢まで川柳をしたいなどと考えたこともなかったのに。
今川柳に心惹かれた理由を考えてみると,過去40年間書き続けてきた随筆が,最近齢と共にだんだん感性が落ちてきて書くのがおっくうになり,根気も続かなくなってきた。短い文章なら書けるかもしれない。そんな思いがしていた矢先「何事もなかったような顔で寝る」「余命一年夕焼けが美しい」に出会った。この短い5・7・5の文章に十人十色の句の見方があり感じ方がある。人は死が迫ってくると自分を取り巻くすべてのものが実に美しく輝いて見える。人の心の深い深い奥底を17文字に絞り込んで人生の哀歓や人間模様を詠み,喜怒哀楽を織りなす川柳とは何とすばらしい詩なんだろう!とこの句が胸に突き刺さった。そして自分がこんなに心惹かれるのは川柳の魅力を無意識のうちに感じていたからではなかろうかと気がついた。
書くことが大好きな私は一枚の紙の中に没頭して自分の思いを自由自在に表現し,この「二つの川柳」のような人の心を打つ内面の深い句を一句でいいから死ぬまでに作ってみたいと思った。生きている限り目標に向かって邁進したい。千里の道も一歩ずつ前へ前へと足を運んでおれば,いつかは夢を掴めるかもしれない。何をするにも忍耐と努力の積み重ねを乗り越えてこそ美しい実を結ぶのだ。全く知らない未知の世界へ足を踏み入れるのは好奇心と期待感があり,いくつになっても胸がときめいて気持ちが高揚する。新しいことに挑戦するのは希望があり,目の前がパッと開けて心ワクワク人生がバラ色に思える。「よーしやるぞ!」と久しぶりに私の心は燃えた。生きていると人生はおもしろいなあ。
善は急げだ!早速徳島新聞社の文化部に電話すると,徳島柳壇でご活躍されているI先生をご紹介してくださった。そして「佐古川柳会」に入会させて戴き,平成23年5月13日,生まれて初めて句会に出席したのである。今月の課題,「漬物」「脇役」「道」それぞれの題に3句ずつ全部で9句,何が何やらわからぬまま心に浮かんだ句を5・7・5の17文字にまとめて提出した。
漬物…「ぬか漬けのような女になりたいな」。毎日食べても飽きないなすびのぬか漬けの味,そんな女になりたいと思ったから。「七十路生き古漬けの味まだ遠い」「主婦の座は押せど動かぬこんこ石」(たくあん石)。
脇役…「脇役の妻がかじとる家の内」。しっかり者の友の顔が浮かんだので句にした。「義理人情脇で泣かせる名場面」。「べっぴんさん引き立て役がおればこそ」。
道……「早よ来いとレンゲタンポポまねく道」。5月の畦道にはレンゲ,タンポポが咲き,散歩においでと私を呼ぶ。「お遍路も地域の人も歩く道」。「華道展忍耐努力積み重ね」
老春を楽しむ「ひよこ川柳」を作って生きがいの友として歩んでゆきたい。
田中 富榮(徳島県徳島市)
友達のTさんが「本物語」をご紹介してくださった。早速パソコンで検索すると全国から投稿されたエッセイ集が載っている。私は毎日3〜4人ずつの文章を拝読し,その書かれている内容のすばらしさに目を見張ったのである。どの人の文章もみんなレベルの高いものばかりで,何とすばらしい本なんだろうと読むほどに私の心はグイグイ本の中に引き込まれていった。すべて読み終えても,もう一度読みたいという気持ちになり繰り返し読んだ。その中で「二つの川柳」という短い文だけれどお寺の句碑の「何事もなかったような顔で寝る」が著者の目に止まり,なくなられたお兄さんと重なって,生前の「兄」を偲んだしみじみとした温かい著者の心情が読み取れて心に残り,「読みたい!」と私を捉えて放さなかった。また著者ご自身の「余生一年夕焼けが美しい」も格調の高い句で人生の重みが伝わってくる。いい文章は糸を引いたようにいつまでも余韻が残る。時々「二つの川柳」に会いたくなるとパソコンをそっと開いて恋人にでも出会うような気持ちで私は読んだ。なぜこんなに心が惹かれるのか自分でもわからなかった。
何回も読み返しているうちに「川柳ってこんなに味のある奥深いものだったのか!私も川柳を作ってみたいなあ」と,堰を切ったように熱い思いが胸いっぱいに広がり,川柳を勉強したい気持ちを抑えきれなくなったのである。それで先ず川柳の本を読んでみようと思い,「番傘川柳」という本を買ってきた。俳句は自然を詠むが川柳は人を詠む。世相をみつめ人間感情のすべてを十七文字で表現する楽しい文芸であると書いてある。人間を詠むというところが気に入った。ある日何気なく読んだ「本物語」の「二つの川柳」にふと心が動かされ,じっとしていられない感動が湧いてこようとは「縁」てふしぎなものだなあと思う。私は75歳のこの齢まで川柳をしたいなどと考えたこともなかったのに。
今川柳に心惹かれた理由を考えてみると,過去40年間書き続けてきた随筆が,最近齢と共にだんだん感性が落ちてきて書くのがおっくうになり,根気も続かなくなってきた。短い文章なら書けるかもしれない。そんな思いがしていた矢先「何事もなかったような顔で寝る」「余命一年夕焼けが美しい」に出会った。この短い5・7・5の文章に十人十色の句の見方があり感じ方がある。人は死が迫ってくると自分を取り巻くすべてのものが実に美しく輝いて見える。人の心の深い深い奥底を17文字に絞り込んで人生の哀歓や人間模様を詠み,喜怒哀楽を織りなす川柳とは何とすばらしい詩なんだろう!とこの句が胸に突き刺さった。そして自分がこんなに心惹かれるのは川柳の魅力を無意識のうちに感じていたからではなかろうかと気がついた。
書くことが大好きな私は一枚の紙の中に没頭して自分の思いを自由自在に表現し,この「二つの川柳」のような人の心を打つ内面の深い句を一句でいいから死ぬまでに作ってみたいと思った。生きている限り目標に向かって邁進したい。千里の道も一歩ずつ前へ前へと足を運んでおれば,いつかは夢を掴めるかもしれない。何をするにも忍耐と努力の積み重ねを乗り越えてこそ美しい実を結ぶのだ。全く知らない未知の世界へ足を踏み入れるのは好奇心と期待感があり,いくつになっても胸がときめいて気持ちが高揚する。新しいことに挑戦するのは希望があり,目の前がパッと開けて心ワクワク人生がバラ色に思える。「よーしやるぞ!」と久しぶりに私の心は燃えた。生きていると人生はおもしろいなあ。
善は急げだ!早速徳島新聞社の文化部に電話すると,徳島柳壇でご活躍されているI先生をご紹介してくださった。そして「佐古川柳会」に入会させて戴き,平成23年5月13日,生まれて初めて句会に出席したのである。今月の課題,「漬物」「脇役」「道」それぞれの題に3句ずつ全部で9句,何が何やらわからぬまま心に浮かんだ句を5・7・5の17文字にまとめて提出した。
漬物…「ぬか漬けのような女になりたいな」。毎日食べても飽きないなすびのぬか漬けの味,そんな女になりたいと思ったから。「七十路生き古漬けの味まだ遠い」「主婦の座は押せど動かぬこんこ石」(たくあん石)。
脇役…「脇役の妻がかじとる家の内」。しっかり者の友の顔が浮かんだので句にした。「義理人情脇で泣かせる名場面」。「べっぴんさん引き立て役がおればこそ」。
道……「早よ来いとレンゲタンポポまねく道」。5月の畦道にはレンゲ,タンポポが咲き,散歩においでと私を呼ぶ。「お遍路も地域の人も歩く道」。「華道展忍耐努力積み重ね」
老春を楽しむ「ひよこ川柳」を作って生きがいの友として歩んでゆきたい。
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